自民補選2敗、辺野古移転への反対にも丁寧な説明の継続求めた読・産

◆「政権の緩み」を指摘

 「衆院補欠選挙での2敗は、政府・自民党にとって痛手だ」(読売・22日付社説)、「支持基盤の弱い地域だったとはいえ、与党有利とされる補選での2敗は『取りこぼし』ではすまされない」(日経・同)、「自民系候補を擁立した衆参補選で8連勝中だっただけに政権与党が足踏みした印象は拭えない」(産経・同主張)。

 21日に投開票された、夏の参院選の前哨戦となった衆院大阪12区と沖縄3区の両補欠選挙は、自民党の2敗で終わった。自民党は大阪で前議員の弔い選挙として臨んだが、先の地方選での府知事・市長のダブル選勝利で勢いに乗る日本維新の会の新人候補に通じなかった。沖縄では県知事転出の玉城デニー氏の失職による選挙で、米軍普天間飛行場の辺野古移設が争点となり、野党各党の支援を受け玉城氏の後継として移設反対を訴えた「オール沖縄」無所属新人の勢いを、公明の推薦を受けた自民新人がストップできなかった。

 冒頭はこの選挙結果についての各紙論調の受け止めだが、自民敗因の一つに共通して厳しく指摘したのは「政権の緩み」。見出しに「慢心」を掲げた読売は「緩みと慢心を排さなければ、参院選は厳しい戦いを余儀なくされよう」とやんわりとした批判だったが、「緩み」を掲げた産経は手厳しく「『安倍1強』という長期政権のおごりと緩みが敗北を招いたと受け止めるべき」だとずばり迫った。

◆野党も存在感示せず

 「衆院補選2敗の重みをわかっているか」と見出しで啖呵(たんか)を切る日経は「安倍1強とおだてられ、慢心はなかったか。閣僚らの相次ぐ失言騒動などもさりながら、その際の事態収拾の遅さは安倍政権と民意の間に距離があることを示している」と表面化した問題よりも、さらに本質へと迫って論じた。また、立憲民主党などの野党に対しても返す刀で「選挙戦で存在感を示す局面がほとんどなかった。自民党敗北を自分たちの勝利だなどと思わないことだ」とも切り込んだ。妥当な指摘である。

 これに対して朝日(同・社説)と毎日(同)は日本維新の会が勝った大阪についてはパスして、沖縄3区補選一本やりで論じた。

 冒頭からそれぞれ沖縄の民意を「政府がむき出しの力で抑えつけようとしても、決して屈しないし、あきらめない。県民のそんな思いが改めて示された」(朝日)、「辺野古埋め立てを既成事実化して住民のあきらめムードを作り出す。そんな戦術が全く通用しないことを、政権はどう考えているのか」(毎日)と政府に迫る。昨年9月の知事選、今年2月の県民投票、そして今回と「『辺野古ノー』の民意が三たび示されたことになる」(毎日)と主張。

◆疑問残る毎日の主張

 朝日は、当選した屋良氏が基地問題に取り組む記者などとして「米海兵隊の運用見直しや普天間の機能分散を提案してきた」として「そうした見解にも誠実に耳を傾け、今度こそ『辺野古が唯一』の思考停止状態から」脱却を、毎日も「政府の正統性は国民に由来する。権力行使の正統性も時々の選挙によってチェックされる。安倍政権は直ちに工事を中止し、沖縄の民意と向き合う」ことを政府に求めた。

 だが、毎日は沖縄県民だけが「国民」としているようで、疑問の残る主張である。

 この問題では、補選の結果を受けても産経は「与党は普天間飛行場の危険を除去するためにも、辺野古移設が重要であることを丁寧に説明していく必要がある」と主張。読売は「移転計画への根強い反対を裏付ける結果だが、普天間の危険性を除去しつつ、抑止力を維持する上では、辺野古への移設が現実的な唯一の選択肢である」と論じた。安全保障政策は「政府が国際情勢などを勘案し、国民の生命・財産を守るために、責任を持って推進」するものだからである。丁寧な説明の継続を求める産経、読売が正論である。

(堀本和博)