インド太平洋構想、日米豪印ネットワーク強化を


 安倍晋三首相はシンガポール、オーストラリア、パプアニューギニアの3カ国歴訪に向かった。訪日したペンス米副大統領との会談では、日米が「公正なルールに基づく、自由で開かれたインド太平洋地域の経済発展を実現していくことを再確認」しており、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議やASEANと日米中などの首脳が出席する東アジアサミットでも中国に対して強い姿勢を打ち出すべきだ。

中国に歯止めかける狙い

 首相とペンス氏は「自由で開かれたインド太平洋」の実現について、共同声明にエネルギー、インフラ、デジタル分野などでの協力を盛り込んだ。ペンス氏は「インド太平洋のインフラ計画は米国の優先課題だ」と強調し、同地域のインフラ整備に600億㌦(約6兆8000億円)の支援を表明しており、日本も100億㌦(約1兆1000億円)規模の支援を行う。

 ASEANおよび地域各国との会合を前に日米の結束を示すことで、南シナ海の軍事拠点化など国際ルールを無視しながらシルクロード経済圏構想「一帯一路」を進める中国に歯止めをかける狙いがある。中国は南シナ海でベトナムやフィリピンとの間に領有権問題を抱えるが、埋め立てた人工島にミサイル配備を進めている。

 南シナ海における中国の主権主張を否定するため、米艦が人工島付近を航行する作戦をめぐって、米イージス駆逐艦「ディケーター」に中国蘭州級駆逐艦が約40㍍まで異常接近したことは航行の自由への挑戦だ。

 また、違法コピー商品や補助金による廉価な輸出品で世界を席巻してきた中国は、米国から知的財産権侵害などを理由に米通商法301条による制裁関税を課せられた。さらに、インフラ整備を渇望する途上国に返済不可能なほど過剰な融資を行う「借金漬け外交」などが問題視されている。

 中国がこのまま覇権拡大を推し進めることに世界各地から懸念の声が上がっているのは事実だ。しかし、債務を抱えた途上国は中国の不公正にものが言えなくなり、やがてカンボジアのように政権ごと手なずけられてしまう。日米などの支援で中国の悪影響を抑える必要がある。

 首相は今国会の所信表明演説で「ASEAN、豪州、インドをはじめ、基本的価値を共有する国々と共に、日本は、アジア・太平洋からインド洋に至る、この広大な地域に、確固たる平和と繁栄を築き上げる」決意を表明した。

 また、9月に行われた国連総会一般討論演説でも、アジア太平洋からインド洋に至る地域に自由で公正な経済のルールを広げることが自由貿易体制の恩恵を受けた日本の使命だと訴えた。特にASEANについて「太平洋とインド洋の交わり」に位置すると指摘し、米国、豪州、インドなど「思いを共有する全ての国と開かれた海を守りたい」と、シーレーン(海上交通路)の保全を強調した。

 ルールの順守を促せ

 これらの国々のネットワークを強化して地域の安保・経済を主導し、中国にも自由で公正な経済ルールの順守を促したい。