日米首脳会談、相互利益の向上が重要だ


 安倍晋三首相とトランプ米大統領が首脳会談を行い、2国間のモノの貿易を自由化する物品貿易協定(TAG)の締結に向けた交渉の開始で合意した。関税引き下げのほか税関手続きの円滑化などの交渉が日米間で本格化することになる。

 自動車への高関税は回避

 TAGは工業製品から農産品まで、ほぼすべての物品を対象に関税の撤廃や削減を目指す。貿易や投資のルールも含む環太平洋連携協定(TPP)などの自由貿易協定(FTA)とは異なる。

 一方、日米両政府が会談後に発表した共同声明には、日本の農産品についてTPPを念頭に「過去の経済連携協定(EPA)で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限である」と明記された。例えば日本は牛肉について、TPPで関税を38・5%から9%まで下げることで合意したが、これ以上の要求には応じられないことを意味する。当然のことだ。

両首脳は、米通商拡大法232条に基づく日本の自動車への25%の追加関税が「交渉中は課されない」ということを確認した。当面は米側の高関税措置を回避できたが、厳しい交渉が予想される。

 2017年の日本から米国への自動車の輸出は約174万台と国内生産の約18%を占め、自動車部品を含む輸出額は5兆5000億円を超える。トヨタ自動車は25%の追加関税発動で車両1台当たり6000㌦(約67万円)のコスト増につながると見込んでいる。

 同盟国の経済に打撃を与えることが、本当に米国の国益につながるのか疑問だ。トランプ氏は保護主義がどの国の利益にもならないことを肝に銘じる必要がある。

共同声明によれば、両首脳は日米間の強力かつ安定的で互恵的な貿易・経済関係の重要性を確認した。日米両国は長年にわたって世界の中で自由貿易体制を引っ張ってきた。日本としては国際秩序を維持する上で、日米が相互利益を向上させていくことの重要性を、今後も強く訴えていかなければならない。

さらに共同声明は、中国を念頭に知的財産権の侵害や自国の産業を優遇する政策などの不公正な貿易慣行に、日米が協力して対処するため緊密に作業していくことなどを盛り込んだ。

知財侵害を理由として米政権は中国に巨額の貿易制裁関税を連発している。しかし、米中の「貿易戦争」は国際社会に混乱を招き、世界経済にとってもプラスにはならない。米国は日本や欧州などと連携し、世界貿易機関(WTO)の改革を通じて知財侵害を防止すべきだ。

 北への圧力欠かせない

北朝鮮問題では、トランプ氏が調整する金正恩朝鮮労働党委員長との再会談に向け、日米、日米韓の連携を再確認した。拉致問題解決へ協力することでも一致した。

安倍首相は正恩氏との対話を見据え、国連総会の一般討論演説では北朝鮮への圧力に言及しなかった。だが核・ミサイル・拉致問題の包括的解決には、米韓をはじめとする国際社会と共に圧力をかけ続けることが欠かせないはずだ。