女性議員パワー増大へ
取り組み加速させよう
「日本の女性議員は絶滅危惧種になってしまう」。小池百合子・東京都知事は国会議員時代、こんな警鐘を鳴らした。その東京の都議選では、過去最多の36人(28%)の女性議員が誕生した。だが一方、通常国会では、政党などに選挙の男女候補者数を均等に近づける努力義務を課す議員立法、「政治分野における男女共同参画推進法案」が、積み残されてしまった。
衆議院の女性議員比率は現在9・3%。世界193カ国の下院・1院中、164位である。日本の各種国際ランキングの中でも最低の数字だ。
世界平均は23・6%。20年前の11・7%から着実に伸びた。100カ国以上が「クオータ制」(女性議員数割り当てか、女性候補者割り当て努力)を導入している結果でもある。
61・3%で世界一のアフリカのルワンダは、2003年の新憲法で、議員や裁判官などの女性比率を30%以上と定めた。94年の大民族紛争で、国民の1割以上(主に男)が虐殺された国。女性へのポスト割り当てが必須となった。
戦乱とテロ、強権政治と家長制社会で、女性が軽視されてきた国々でも、欧米軍の介入後、例えばアフガニスタンは05年、イラクでは06年にクオータ制が導入され、女性議員比率は各27・7%、25・3%と、かなり高い。
女性議員が増えても平和や民主主義は遠い。
民主主義と自由に関する米NGO「フリーダムハウス」の17年版調査報告(1から7まで0・5刻み)で、ルワンダは、07年の5・5から6に、アフガニスタンは5から6に下がった。イラクは6→5・5だが、みな「自由でない国」のままだ。
05年のアフガン新政権による最初の総選挙で、27歳の最年少女性議員となったマラライ・ジョヤは、軍閥ボスや麻薬密輸人や過激派がいっぱいの男性議員の行状や汚職政治を痛烈に批判し続けた。再三暗殺されかけ、07年に国会を侮辱したとして除名された。男支配の政治の壁は厚い。
だが、女性市民パワーは近年、リベリアの内戦終結に貢献し、ケニア、フィリピン、南米コロンビアなどでも、男たちの抗争や暴力にブレーキをかけた。
将来的には、女性議員パワー拡大が平和と民主主義の拡大に貢献すると期待してよい。
当面女性議員が力を発揮しているのが、人間開発分野だ。ルワンダは15年までの国連ミレニアム開発目標に熱心に取り組み、教育、保健、女性の地位などで、最大級の前進を実現した最優等生として賞賛された。
国連開発計画(UNDP)が、保健、教育、所得の3要素をもとに、毎年世界各国の「人間開発指数」(HDI)を算定している。ルワンダのHDIはかつて最低部類だったが、90年―2015年の年間平均上昇率は2・89%で世界一だった。平均余命は、2000年の48・3歳から15年は 66・1歳に伸びた。世界2位の伸びだ。初等教育の完全普及も達成した。女性や子供への暴力も厳しく罰せられるようになった。
女性議員は家族、教育、健康などへの関心がずっと強く、この前進に大きな役割を果たしたのである。
日本も、女性力が一層発揮されるべき問題が山積している。
そして、21世紀の国際情勢の中で、自由民主主義国の代表として頑張りたい。
「慰安婦=性奴隷」の日本非難キャンペーンに対し、女性軽視の国との国際的イメージを全ての面で払拭したい。164位では代表も払拭もない。
都議選のようにはなかなか行かない。すぐ「美人過ぎる市議」などと扱うメディアも問題だろう。女性議員パワー増大のため、一層真剣に取り組むべきと思われる。
(元嘉悦大学教授)