閉会中審査、加計より安全保障が緊要
学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画問題をメインテーマとする衆参両院での閉会中審査が行われた。安倍晋三首相自らが出席し丁寧に答えたことで、野党や一部メディアが疑惑と決め付ける質問の矢は尽きたものとみられる。野党はこれ以上メディア受けを期待し政権を貶めて政局化を狙う不毛な論議をすべきではない。
文科省が行政ゆがめる
今回明らかになったのは、「加計ありき」で行政がゆがめられたとの野党および前川喜平前文部科学事務次官の主張の論拠が希薄であることである。
野党側は、首相が政権復帰後に親友の加計孝太郎理事長と会食やゴルフで少なくとも14回接触した点を指摘し、依頼や便宜供与があったのではないかと首相に迫った。しかし、首相の答弁通り、加計学園の獣医学部新設計画を知ったのが1月20日の国家戦略特区諮問会議だとすれば、前年からの指示や関与はあり得ないからだ。
前川氏が昨年9月、「首相は自分の口からは言えないから、私が代わりに言う」と和泉洋人首相補佐官から聞いたとの証言も、和泉氏自身は否定した。参考人の加戸守行前愛媛県知事が「前川氏は想像を全部事実のように発言している。精神構造を疑う」とキッパリ語ったが、「加計ありき」という虚構を勝手に事実だと思い込み、印象操作をしているのは前川氏自身ではないのか。
問題は、行政をゆがめてきたのが文科省であったことだ。加戸氏は獣医学部誘致の申請が認められなかった原因が文科省の岩盤規制だったことを明らかにした。鳥インフルエンザ、狂牛病、口蹄疫などに対処するため公務員獣医師を養成したいとの要望を阻んできたのが業界団体などと組んで行政に当たってきた文科省だというのである。
約半世紀にわたって獣医学部の新設を認めず、時代のニーズを考慮せず獣医の独占を放置して岩盤を死守しようとしてきたことこそゆがみそのものではないか。「国家戦略特区が岩盤にドリルで穴を開けてくれた。ゆがめられた行政が正された」とした加戸氏の指摘こそがこの問題の本質である。
民進党の蓮舫代表は首相に対して「まさかこれで幕引きと思っていませんよね」と述べ臨時国会の早期召集を迫った。だが、その狙いが政局化であることは明白だ。「森友学園」問題でもそうだが、首相への疑惑を一部メディアと一緒になって国民に印象付けてきた。内閣支持率をさらに下げ、安倍「1強」体制を崩して首相が秋の国会で本格的に深めたいとしている憲法改正論議を妨げる思惑があろう。
緊迫する極東安保情勢
むしろ、今必要なのは、日本を取り巻く安全保障環境の厳しさにどう対応するかといった国家・国民の生命と財産に直結する緊急課題の議論だ。北朝鮮による核・ミサイルの脅威は新たな段階に入っている。中国公船が沖縄県・尖閣諸島周辺に出没し領海侵犯を繰り返している。北朝鮮に拉致されている邦人の救出は待ったなしである。緊迫する極東情勢を踏まえた安全保障問題に関し、閉会中審査を開催することを提案したい。