ネーミング戦争


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 スターバックスとヤフー。この2企業のブランド名の共通点は古典だ。米国の小説家ハーマン・メルヴィルの『モビー・ディック(白鯨)』には捕鯨船の一等航海士「スターバック」が登場する。スターバックスはこれを借りて航海と冒険のストーリーをコーヒーと結合させたという。英国のジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』には本能だけに忠実な存在として野蛮族のヤフーが登場する。ヤフーという命名は、理性だけでなく時にはよそ見をしながら楽しみを追求する人間を表現しようとしたものだという。うまく付けた名前が大ヒットしたわけだ。

 金融当局もネーミングが重要だ。政策の勝敗が懸かっているといっても過言ではない。昨年、金融当局の主導で発売された中金利(6~10%内)貸出商品の『サイットル』(間の石という意味)は話題となった。堅いイメージの金融商品を簡単に説明した名前であるためだ。金融委員会は商品名の公募に東奔西走したが、サイットルは広告企画社サンアムコミュニケーションズの作品だった。微笑(ほほえ)み金融、安心転換貸出などは第一企画の諮問によって誕生した。

 汝矣島ではネーミング戦争が日常的に起こっている。選挙の時期になると勝敗を左右する枠組みをどちらが先に占有するかに直結する。盧武鉉政権時代にハンナラ党は「対北ばらまき」と「税金爆弾」、そして朴槿恵代表は「本当に悪い大統領」だと攻撃した。民主党の総合不動産税引き上げ政策は税金爆弾という枠組みに阻まれ苦戦した。しかしネーミングの腕前は民主党が一枚上だった。無償給食や金持ち減税、MB(李明博大統領)悪法等々。今年の5・9大統領選挙ではローソク革命、積弊清算が民心を誘導した。新政府が誕生した頃、文在寅大統領の熱誠支持者たちによるメール(SMS)爆弾が論争を起こした。国民の党の李彦周議員には1万通も送られ“メールテロ”だと激憤。すると与党・民主党の孫恵園議員が“メール行動”という言葉を使おうと提案した。

 増税をめぐる与野党の論戦が始まり、ネーミング戦争が再発した。昨日、民主党の指導部は先を競って「名誉課税」「サラン(愛)課税」「尊敬課税」という言葉を吹聴し、増税の表現も課税に変えた。学習効果による精密対応だ。野党は税金爆弾と「懲罰的増税」などで対抗している。今度も与党の戦略が浸透しつつある。与党の重荷である増税問題でも力を発揮できない、まことに寒心に堪えない野党だ。

(7月25日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。