地域に関心薄い統一地方選

細川 珠生

政治ジャーナリスト 細川 珠生

結果で国政評価は疑問

地方の問題に真剣な論戦を

 改めて、地方議会、地方行政の役割とは何か、国と地方の違いは何かを真剣に考えなおさなくてはならないという現状があぶりだされた今回の統一地方選前半戦。無投票当選率も、投票率も過去最悪の結果となり、有権者の関心があまりに低いこの実態を、国民全体で真剣に考えなくてはならないだろう。

 前回の統一地方選までは、東京都知事選も行われており、有権者の1割以上が暮らす東京で選挙があるかないかは、全国的な盛り上がりを考える上で大きな要因であることも、改めて気づかされた。さらに、1999年の第14回統一地方選までは、大阪府知事選も行われており、その頃は連日のように知事選が報道され、政局的にも大きな意味を持った。しかし、統一地方選と言われながら10知事選しかないことは、全国的な盛り上がりを考えると、どうしても限界がある。

 とはいえ、41道府県議会議員選挙は行われていたのである。アベノミクスの効果は、まだ地方では小さく、地域経済はいまだ苦しい状況を強いられている。そもそも「地方創生担当大臣」を置くほど、人口流出や少子化など地方の衰退ぶりが深刻化し、地方の立て直しが、今の日本にとって重要な問題であるのだ。

 本来なら、どのような地域活性化策を取るのか、人口を流出させず増やしていくためにはどうするのかなど、それぞれの地方での争点はあったはずである。25年後には、893の自治体が消滅可能性自治体となるという民間のシンクタンクの試算に衝撃を受けて初めての選挙だというのに、相も変わらず、国の政治勢力を当てはめるだけの戦いは、莫大な費用をかけて選挙をすること自体、意味がないとしか思えない。

 少子化と同時に、世界一の長寿国となった日本は、これから益々高齢者が増えることへの対策も、待ったなしである。平成26年度版男女共同参画白書によれば、平成24年の90歳生存率は、男性22・2%、女性46・5%だという。つまり、男性の5人に一人、女性は、なんと半数が90歳まで生きるというのだ。「60歳定年制」や年金をはじめとする社会保障制度は、今の時点でも実態とは乖離(かいり)した制度であるということになる。

 国の制度を改めることはもちろんであるが、高齢者がどんどん増える中での町づくり、産業の在り方などは、個々の地方が自らの問題として取り組むべき課題だ。介護保険制度も然りである。それらが、この統一地方選の中で、どれだけ語られたのだろうか。候補者も有権者も、どれだけそのことに関心を寄せて選挙に臨んだのだろうか。

 「自民が過半数を制した」「民主は後退」というような国の政治勢力に組みこむような選挙結果の受け止め方は、間違っているとさえ、私は思う。ましてや、これで国の与党勢力が、来年の参議院選挙で弾みがつくというような単純な話ではない。政権の評価につなげるのであれば、政党は、最低限、よい候補者と地方創生につながる政策を出せなくてはならない。その上での結果なら、国政への評価と考えてもよいであろう。

 また今回の10知事選は、全員現職が当選したが、そのうち、北海道、福井、徳島、大分の各知事は、4期目に入る。すでに12年、「大統領的」とも言われる知事職を務めながら、4期目を全うすれば16年間知事職にあるということになる。能力、資質の面において個人差はあるとはいえ、世の中の変化が激しい中で、絶大な権力を持つ知事という立場に16年もいるというのは、いかがなものであろうか。

 過去には多選の弊害から、3選目、4選目は出馬しないと自ら判断した首長たちも、多くはないが何人かはいた。しかし、どうもいつまでも権力の座に居たいという心理があからさまだったように思えてならないのである。法律で多選を禁止することは、今の日本にはできないそうだ。それは憲法によって保障されている「職業選択の自由」に抵触するからだという。

 しかし、それはほとんど屁理屈のようなものだ。特に権力者であり公人は、その公正さを保って任務を行うために制約を受けても、それは憲法が保障する人権などには何ら影響はないはずである。よりよい社会の制度が、公正さを持って作られるためには、どのような制度が必要なのかは、もっと真剣に考えないといけないであろう。

 いよいよ、統一地方選の後半戦が始まる。東京も、市区村長、区・市議会議員選挙がある。地方議会の在り方も争点の一つとし、少子高齢社会や地域産業の活性化など、多くの有権者が関心を持ち、真剣に考える政策を提示して、選挙戦に臨んでほしいと思う。せっかく選挙という機会があるのだから、ぜひとも、無投票ということは避け、選挙戦の中で、我がまちの課題を知り、考える重要な機会としてもらいたい。

(ほそかわ・たまお)