渋谷区が同性カップルに“証明書” 結婚、家族の在り方を揺るがす

条例案を即時撤回せよ

弁護士 秋山 昭八

秋山 昭八 渋谷区は、平成27年度の当初予算案において「男女平等多様性社会の推進―パートナーシップ証明」と題し「(仮称)渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例(案)」を制定し施策を進めるとし、

 ①LGBTなど性的少数者に対する理解に取り組む。

 ②同性パートナーシップを結婚に相当する関係と認め、証明を行う。

 ③多様性社会推進会議を設置する。

等を行政課題としている。

 ところが、憲法24条1項は、婚姻は「両性」の合意に基づいて成立し、「夫婦」が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならないと定め、更に同条2項は、財産権、相続、住居の選定等の事項については「両性の」本質的平等に立脚して制定されなければならないと定めている。このとおり、憲法及び民法その他の諸法律上は、未だに同性婚はもとより同性カップルに対する法的保護を付与する制度は一切存しない。

 また、我が国の道徳規範にも同性婚を容認する認識はなく、小、中、高、諸学校における道徳教育においても未だ同性婚及び同性カップルを奨励する学習指導は許容されていない。

 欧米諸国における同性婚容認の制度については未だ定着しているとは言えず、フランスにおける同性婚反対の大衆運動は未だ盛んに実施されている現状である。アメリカにおいても民主党政権は是認しているが、共和党は強く反対している。東南アジアにおいては中国、台湾はもとより、イスラム教を国教としている多数の国では同性婚ないし同性間の性行為を是認していない状況である。

 結婚を男女間のものと限定している法律は違憲とする米国の連邦最高裁の判断が、同性カップルの権利拡大に道を開いたといえる状況下で、渋谷区が、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めて証明書を発行する条例を作るという背景には、アパート入居や病院での面会を家族ではないからと断られてきた性的少数者(LGBT)の声がある。だが、そのような声を代弁する今次提案は、法的な効力はなく、同性婚容認とは次元の異なる試みだとしても、結婚や家族の在り方を揺るがす大問題である。

 社会の多様化、性的マイノリティーに対する保護等の美名のもとに提案された今次制度だが、社会の実情は決して文字通り多様性を有しておらず、また性的マイノリティーに対する多数者の同情も存在していない。

 提案理由に多数の国民が反対している実情を直視すべきだ。結婚は、男女が婚姻届を役所に提出することで成立し(法律婚主義)、戸籍上両者の関係が記載され、その関係を公証してもらえる。同氏を名乗る権利及び義務を持ち、同居し、互いに協力、扶助貞操などの義務があるが、互いの血族から姻族として親族として扱われる。また、互いの生活財の共有権や遺産相続権などを法律が保障する。このような法律婚と異なる今次制度は即時撤回するべきだ。