渋谷区の同性愛結婚相当条例案に社会規範差し置いて賛成する朝毎
◆同性愛とHIV感染
最近、エイズ(後天性免疫不全症候群)に関するニュースがめっきり減ったように思う。かつては厚生労働省のエイズ動向委員会の発表モノが新聞の1面を飾ることもあった。それが慣れっこになったのか、新薬の開発で恐ろしさがなくなったのか、短報扱いが多い。死亡率は低下したが、感染者は増加しており、決して侮れない。
エイズはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって発症する。血液や精液など体液が感染源だ。輸血や血液製剤による薬害エイズや母子感染は二次感染で、大半は性的接触による。
ゼロ号患者(最初の患者)は1981年の米国の31歳の同性愛者で、年間250人のセックス・パートナーと交わり、エイズを全米に拡散させた(『ウイルスの反乱』青土社)。異性、同性を問わないフリーセックスが爆発的感染の震源となった。
米国スクリップ研究所ウイルス免疫生物研究部長のマイケル・オールドストーン博士はこう述べている。
「性別の嗜好にかかわらず、際限のない野放しの性的自由はエイズのほかに、B型肝炎、アメーバ感染症、ジアルジア症、淋病、梅毒、カリニ肺炎、カポジ肉腫などさまざまな病気をばらまいた」(『ウイルスの脅威』岩波書店) わが国でもHIV感染ルートで圧倒的に多いのは同性間の性的接触で、7割近くを占める。これが同性愛者をめぐる偽らざる事実だ。
このことを知ってか知らずか、東京都渋谷区は同性愛のカップルを「結婚に相当する関係」と認め、証明書を発行して区営住宅などに家族として入居申し込みができるようにする条例案を区議会に提出する。条例が制定されれば、同性愛者にやさしい街というので、全国から同性愛者が移住してくるに違いない。
◆シスコでの弊害の例
前掲のオールドストーン博士によると、1970年の終わりから80年代の初めは同性愛が社会的に容認された劇的な時期で、サンフランシスコは性的自由の約束の地となり、74年から78年にかけて2万人近い同性愛の男が移住してきたという。
サンフランシスコで献血される血液の10%近くが同性愛者の献血とされ、それで薬害エイズを広げた。渋谷がわが国の同性愛者の「約束の地」にされるのだろうか。
さて、前置きが長くなったが、こんな渋谷区の条例を朝日と毎日がもろ手を挙げて賛成している。朝日15日付社説「同性カップル 支える一歩を広げたい」は、「特定の異性に自然とひかれていくように、同性間でひかれ、愛しあうこともまた、決して珍しいことではない」とし、「そんな人たちを支えようと、自治体でできることを模索し、新たな一歩を踏み出そうとする取り組みを評価したい」とする。
一方、毎日15日付社説「『性的少数者』条例 議論を深める一歩に」は、同条例を「レズビアンやゲイなどの性的少数者(LGBT)の人権尊重が狙い」とし、「LGBTへの差別をなくし、パートナーとして公的に認める法整備」を促している。
LGBTとはレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー・トランスセクシュアル(性別越境者)を指す。毎日はこれを性的少数者と呼ぶが、これらは従来、変態(性的倒錯)、異常性欲とされてきた。
◆読・産は黙殺するな
倒錯とは「本能や感情の異常および人格の異常によって、社会的規範に反する行動を示すこと」(広辞苑)を言い、伝統的なキリスト教社会では「不自然な肉欲」とりわけ同性愛をソドミズム(旧約時代の淫乱の町ソドムに由来)として禁じた。
仏教でも在家信者に邪淫(よこしまな性関係を結ぶこと)を禁じ、破れば焦熱地獄に堕ちると諭した。それを毎日は「性的少数者」と呼び、まるで少数民族を救済するかのように法整備を促す。
地方ブロック紙をみると、西日本新聞(福岡)が21日付社説「性的少数者条例 差別や偏見なくすために」で、毎日の社説を引き写したかのような支持論をぶっている。
全国で毅然(きぜん)と反対論を掲げたのは本紙(21日付)のみだ。読売、産経はどう考えるのか、論評はない。曖昧な姿勢で済ます問題ではないはずだ。 (増 記代司)