力強さ見られぬも消費増税から初のプラス成長に楽観的な日経社説

◆予測外す民間や新聞

 昨年4月の消費税増税後、2四半期連続のマイナス成長から、日本経済はようやくプラス成長に転じた。

 先日明らかになった昨年10~12月期の実質GDP(国内総生産)速報値は、前期比0・6%増、年率換算では2・2%増。3四半期ぶり、消費税増税後では初めてのプラス成長である。ただ、プラス成長とはいえ、事前の民間調査機関による予想は平均で3%台後半だったから、それを大きく下回る数値だった。

 民間予測はここのところ分析が甘いのか、消費税増税後という大きな経済事象の状況判断は難解なのか、大きく外すこと3連敗である。

 新聞も責められない。前回1997年の消費税増税当時も、大蔵省(当時)の音頭に乗っかり、「増税しなければ財政は破綻する」とニュース記事や社説で煽(あお)り、その結果は、更なる財政悪化と十数年来のデフレ経済化。甚だしい判断ミスを犯している。

 昨年4月の消費税増税でも、本紙と東京を除きほとんどの新聞が、前回同様、財務省の言い分そのままに、デフレ脱却途上にもかかわらず消費税増税の必要性を訴え、その結果、景気を腰折れさせ、2四半期連続のマイナス成長という今回の事態に至っている。

 読売は増税を実施するか否かを首相が決断する直前になって「見送りを」の論調を変えた(2013年8月31日付社説)が、首相の実施決断を変えるまでには至らなかった。

 さすがに、昨年12月の消費税再増税実施をめぐる判断当時では、首相の見送り決断を本紙、東京、読売、産経の4紙が「当然」「やむを得ない」とした。

◆慎重姿勢示した読売

 本論に戻る。その当時も、消費税増税に対する日経の楽観さが目立った(小欄14年11月14日付指摘)が、今回のGDPについても、同紙の楽観さが目についた。

 今回のGDPについて、社説で論評したのは、17日付の読売、産経、日経、18日付の本紙の4紙で保守系の新聞のみ。安倍政権に批判的な朝日、毎日、東京は、どういう訳か掲載はなし。

 掲載4紙のうち、「プラス成長に転じたものの、力強さには欠けている」として、「先行きは楽観できない」と慎重姿勢を示したのは読売。同様に、本紙も「相変わらず牽引(けんいん)役が見当たらない」と懸念を隠さない。民間の設備投資が微増にとどまっていることにも、読売は「気がかり」とし、本紙は「企業収益は好調でも、消費の弱さのために積極的になれないのであろう」と分析する。

 産経は、まだ力強さはみられないが、「景気が底割れせず持ち直しつつあることを前向きにとらえ、増税で冷え込んだ企業や家計の心理を好転させる契機となるよう期待したい」と、願望を先立たせて希望的に捉えた。「円安や原油安という追い風もある。多くの企業で収益が改善しており、所得増や消費拡大への環境は整いつつある」というわけである。

 ここで、先の日経である。同紙は、成長率の水準が民間予想を下回ったことに、「個人消費や設備投資が予測ほどは伸びなかったためで、反発力には物足りなさが残る」としたものの、「それでも、住宅投資を除けば、内需に底堅さはある」「外需も3四半期連続のプラス」「足元の景気を悲観視する必要はない」と実に楽観的である。

 消費税増税を積極的に支持し勧めた手前、その経済への影響が大きく深刻とは決して言えないということなのであろう。

◆97年以降の二の舞も

 同紙は他紙と同様、春闘での賃上げの行方に、「今回の景気回復を民間需要主導の自律回復へとつなげられるかどうか」「焦点の1つ」(日経)など期待する。政府には法人税改革や規制改革、環太平洋連携協定(TPP)交渉などの加速で、景気の自律回復を後押しする環境を整えよ、と。

 確かに尤(もっと)もだが、同紙が、日本経済の実力を示し、0%台半ば程度にとどまっているという「潜在成長率」=「成長率の天井」という表現が正しいのかどうか分からないが、前述の構造改革で高めなくてはいけないと注文を付けた「成長率の天井」を低くした主要因の一つが、97年以降の経験からも明らかなように、需要の落ち込みを通じて設備投資を減少させた消費税増税であることを忘れてはなるまい。

(床井明男)