首相の政権運営 内閣改造は秋に先送り


 いま永田町でどの党が「これでよし」と自己満足しているかと問われると、やはり自民党の名前を挙げないわけにはいかない。

 自民党はいうまでもなく政権党だ。政権党は数の上から言っても与野党を通じてナンバーワンの立場にある。群がる群小政党を眺め回して「文句あるか」と開き直ればそれまでだ。野党勢は「グー」の音も出ない。

 確かに政権党は政権を担っているから強い。しかし政権党だからといって威張ってばかりはいられない。野党の抵抗があり、党内の事情もある。身内に足を引っ張られることもある。

 東京都議会で塩村文夏都議が晩婚化対策について質問している最中に、自民党の鈴木章浩都議が「自分が早く結婚したほうがいい」などと女性蔑視のやじを飛ばした問題は、石破幹事長が党として謝罪する事態となった。鈴木都議の会派離脱で幕引きを図ったが、問題は尾を引きそうだ。政権党の党首や幹部は冷や冷やしながら政局を運営している。

 歴代内閣を見てもみんなそうだった。ただ、安倍内閣はそれでもいい方の場合に属するかもしれない。なにしろ自民党は保守本流そのものの政権党としての見識も備え、経験も豊富だ。安倍首相が政局をリードしており、心配なのは党内の安倍嫌いの動きだが、いまのところソツなく抑え込んでいる。

 党内で何かゴタゴタが起こりそうだったら、改造で頭を撫でてやればそれで済む。その改造も夏までに実行するはずだったが、秋以降に先送りされた。それで党内を抑えているのだから安倍首相の腕前は相当なものだ。

 安倍政権の長期化が予想されるのもそのためかも知れない。このところ短命政権が続いた。しかし短命は無為に外ならない。国民もようやく長期政権を求めるようになった。これも追い風のひとつだ。

 しかし永田町は一寸先はヤミだ。こんなことで安倍首相がいい気になり、側近たちまで浮かれ出すと危ない危ない。鈴木都議のやじ問題よりも遥かに深い落とし穴にストーンと落ちる怖れがある。これまでが平穏無事だっただけに、ひと波乱起きると厄介なことになる。

 終戦以来、日本は平和ボケの傾向があった。民主党にもその気がある。余程用心しないと民主党も永田町の平和ボケに一発やられる危険なきにしもあらずだ。この秋の臨時国会がその舞台になる。与野党ともに秋霜烈日の如き国会対策まで忘れてはならない。(I)