睨み合う自公 後で「しまった」では遅い
今、永田町で随一のモテモテ政党は公明党だ。それでも集団的自衛権をめぐり自民、公明両党の間がギクシャクしている。気の早い一部の勢力は一種の期待感を込めて、自、公の関係悪化を囃(はや)し立てている。
しかし、そんなことは金輪際起こりそうもない。明らかに両党の安全保障政策は違う。集団的自衛権については両党の歩み寄りはまず不可能だ。それは本来自民党は保守本流を自任し、公明党は一皮むけば野党そのものの体質を持っているためだ。しょせん両党は水と油の他人同士に外ならない。それどころか仇敵のように睨み合ってばかりいる。特に外交、防衛では隔たりがある。
自民党は体質的に公明嫌いだ。田中角栄総理健在の時代は、両党は文字通り蜜月関係にあった。それは田中氏と池田大作創価学会会長(当時)の特別な交友の影響のせいだ。田中氏は公明党を知り尽くしていた。そのノウハウはそのまま竹下元首相に受け継がれた。その頃まで自公の間柄はまさに刎頚(ふんけい)の仲といってよかった。しかしそれ以後はさっぱりだ。
それと同時に、今、自民党は国政レベルの選挙では公明党に負んぶに抱っこの関係にある。手を切ったら一年生が路頭に迷う、という次第で手が切れない。
野党も公明党を敬遠している。公明党はどっちをむいて走り出すか分からないからだ。しかし数の上からいって公明党の参加しない野党連合は意味がない。イザとなると野党が公明党に色目を使うのはこのためだ。
一方、公明党にもいろいろ事情がある。公明党の目指すところは政権だ。政権が取れない以上、自民党と手を握るしかない。閣僚ポストひとつを割り当てられて、一生懸命サービスを惜しまないのは、屈辱以外の何物でもないと腕をまくる不平分子も党内で少なくないが、ここ一番という時に腰が折れる。
政界再編成の掛け声は衰えを見せないが、今のところは見るべき動きに乏しい。自民党は図体は大きいが、主導権を握り永田町に号令をかけるだけの気力体力に欠ける。過半数を握り永田町に君臨している自民党がこの体たらくだ。他は推して知るべしといわなくてはならない。
そのせいか総選挙の声もない。選挙さえなければ永田町は無事平穏だ。政治家は与野党ともに太平楽をキメ込んでいる。しかし世界の流れを見ていると、これでいいのかと思わないわけにはいかない。後で「しまった」では遅すぎる。(I)