バーグダル軍曹を軍事法廷に
タリバン5人を釈放
捕虜交換はパフォーマンス
【ワシントン】またスーザン・ライス氏と日曜日朝のトークショーだ。今回、ライス氏は、ボウ・バーグダル軍曹は「栄誉と功績」をもってアフガニスタンでの軍務に就いたと言った。ベンガジ攻撃の原因は動画だったと言って以来、最大の大うそだ。
バーグダル氏は部隊の任務を放棄し、捜索で仲間の兵士の命が危険にさらされたという明確な目撃証言がある。だが、同氏の引き渡しをめぐって全国的な騒ぎは起きないだろう。この取引に対する反対がさまざまなメディアで放映されても、一部は根拠が弱いとして軽視されることになるのだろう。その根拠を幾つか挙げる。
1、米国はテロリストとは交渉しない。
ばかげている。言うまでもなく、交渉はしている。誰でもしている。していないふりをしているだけだ。イスラエルは、必要に迫られテロリストに対して非常に厳しい対応を取るが、2011年に、拘束された1人の軍曹と1027人の囚人を交換した。その中にはイスラエル人を殺害した者もいた。
2、政府は、法律で定められているにもかかわらず、30日前の事前通告を議会に対して行わなかった。
大統領と議会の間の権限をめぐってはさまざまな議論があるが、大統領は最高司令官として強力な権限を有している。さらに指揮官らは、捕虜交換を交渉する権限を持っている。
議会はどういう理由で突然、権限を主張するようになったのだろうか。5年もの間、オバマ氏に何度も権限を侵害されてもおとなしく従っていた議会が、急に戦争権限をめぐって行動し始めた。しかも、戦争をめぐる議会の権限は非常に弱い。議会は、大統領の医療保険改革で23件もの権限の侵害が行われても何もしていない。オバマ氏が、大統領令でドリーム法を成立させても、何もしない。司法省が一方的に麻薬取締法を書き換えても何もしない。ところが今、捕虜交換を30日前に通告しなかったと言っていきり立っている。
3、タリバンの釈放は国家の安全を損ねる。
確かにそうだ。釈放された5人は、悔い改めたわけではなく、好戦的で、危険だ。しかし、米国とカタールが監視するという主張など冗談にしか聞こえない。今夜にも米国攻撃の計画を立て始められる。あしたカタールを出ると言ったら、誰が止めるのか。
政府としては真面目にやったつもりだったのかもしれない。政府の言い分は、確かに5人を釈放したが、それは捕虜を返してもらうためだというものだ。このような時、欧米諸国では決まって、得るものよりも多くを与える。理由は簡単だ。野蛮な取引相手よりも、自国人の命の方が価値があると思っているからだ。
恥じることではないのだが、悲しいことだ。ならばどうして、バーグダル氏のことでこれほどの大騒ぎになるのか。それは、同氏がそもそもどういう経緯で捕虜になったかにある。ここが問題の核心だ。任務を放棄し、脱走したのではないかとみられている点だ。
こうなると全く話が違ってくる。脱走兵であり、敵に加わり自国を攻撃したのなら、交換する価値はない。むしろ死に値する。戦場で敵を殺すのと同じだ。アルカイダへの参加を公言した米国人、アンワル・アウラキを殺害したのと同じだ。米国のパスポートは、反逆者へのいかなる保護も保証するものではない。(ただし念のため言っておくと、戦争捕虜が捕虜になった後に、ストックホルム・シンドロームのように寝返った場合はこの限りではない)
バーグダル氏が反逆者でないと仮定しよう。単に、まだ明らかにされていない理由から任務を放棄し、部隊を離れ、捜索が行われていただけとして、この脱走兵との交換に応じるだろうか。
二つの規則から答えが導き出せる。バーグダル氏は依然、米軍の兵士であり、従って軍事裁判の対象であり、誰のことも見放さないという兵士の誓いの対象でもある。
どうすべきだろうか。自由の身にし、それから裁判にかければいい。交換し、その上で予想通り十分な証拠があれば、脱走兵として軍事法廷で裁けばいい。
だが、捕虜交換そのものがよかったのかどうかはこれからのことだ。大統領が、ただバランスを欠くとの理由で交換拒否していたら、尊敬に値する。だが、この胸が痛むような取引を実行し、ホワイトハウス・ローズガーデンで成功を祝い、報道官や支持者らにこれをたたえさせる大統領はまったく尊敬には値しない。これは勝利ではない。敗北であり、悲惨な現実への譲歩、汚い取引だ。普通ならば、後悔と屈辱感の中で行われるべきもののはずだ。
ローズガーデンでのパフォーマンスは、単に伝え方を間違ったということではなく、これを行ったこと自体が間違っている。大統領は自身のしたことの重大さにも、その意味にも気が付いていない。誰もが驚き、困惑し、どうしてこんな大統領を2度も選出したのかと自問しているはずだ。











