ノシ上がる共産党 甘い誘いに乗せられる若者


 共産党はいまや押しも押されもしない野党の中心的存在としてノシ上がってきた。

 共産党がまだ弱小野党であった頃から、他の野党を飛び越えて自共対立と持てハヤされたことがあった。社会党、公明党などが本来ならば野党の中心的立場にあるはずだが、それはどこへやら。自共の激突をそばから指をくわえて見ていることがあった。

 共産党は数こそ少ないが、党員のひとりひとりはそれなりの筋ガネ入りだ。それに戦前からの弾圧に次ぐ弾圧に耐えてきた歴史がある。この事実は与野党ともに認めないわけにはいかない。与党も野党もイザという場合には一目置いたものだ。

 その共産党が再び大きくなってきた。先の参院選では大幅に議席を伸ばした。この調子では「政権を」と意識したくもなるのだろう。昔は共産党は怖い政党だった。武力で政権を奪うことを躊躇しない。血を流すのも覚悟の上だ。

 しかしその後共産党は大変身した。つまり怖いおじさんからやさしいお兄さんに外観をすっかり変えてしまった。昔の人ならそのあたりの共産党の変わり身の早さを知っている。

 いまの若い人は違う。昔の恐ろしい共産党を知らない。共産の甘い誘いにすっかり乗せられている感じだ。しかし共産党も勉強している。新しい政策をどんどん取り入れ、保守的考え方も決して排除しない。使えるものはどんどん利用する。共産党が伸びているのはその蓄積に外ならない。保守党しっかりしろだ。

 まことに保守陣営は不勉強だ。共産党をマルクス主義一辺倒で片付けようとしている。昔はそれで通ったが、いまはそうはいかない。ひとたび革新陣営との論争になると舌の達者な革新派にたちまちいちコロだ。

 いま永田町で共産党が政権を語っても違和感はない。いずれそんな時代が来るかも知れないとノンキなものだ。昔だったらその前に右翼が決起する。血の雨が降ってもおどろくに及ばない。いまの右翼は以前ほどの凄味も不在なら元気もない。

 まあ、永田町が無事平穏ならこれに勝る政治的プレゼントはないだろう。しかし政治はやっぱり闘争だ。与野党争うべきことがあったらトコトン争わなくてはならない。

 いま日本は元気がない。永田町も無事平穏をキメ込んでいる。しかし争う時は顔色を変え卓を叩く元気が必要だ。その元気まで失っては永田町の魅力は半減する。この通常国会では元気な与野党一騎打ちを是非見せてもらいたいものだ。

(I)