終末迎える翁長沖縄県政

西田 健次郎OKINAWA政治大学校名誉教授 西田 健次郎

オール沖縄の矛盾露呈
訴訟連発も勝ち目全くなし

 筆者は、本欄で十数回にわたり翁長沖縄県政の異様な実態を厳しく批判してきた。偽り団体の「オール沖縄」の論理矛盾が露呈し翁長知事の求心力も化けの皮がはがれ、いよいよ終末を迎えている。これまでの拙稿を振り返りながらオール沖縄の崩壊を予見してみる。

 ①菅官房長官と安慶田光男副知事(今年1月辞任)は、政治の駆け引きでは「匠(たくみ)」である。十数回の密談が始まった時に筆者は、当時ロビン・フッド並みの人気者に成り上がっていた翁長知事のメンツを立てておけば、普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事が2~3年遅れても日米は了解するシナリオで着地すると公言した(2016年10月6日付ビューポイント)。

 ②法律上も制度的にも何ら権限権能も有しない「第三者委員会」は、翁長知事が辺野古反対へのアリバイづくりの茶番劇を演じるために恣意(しい)的に集めたメンバーでしかない。委員の桜井国俊・沖縄大名誉教授が第三者委員会の前に辺野古反対集会場で、前知事の承認を潰(つぶ)すと演説した。これは県議会で自民党会派に追及された。

 歴史的にも重みのある決定を、翁長知事の矛盾だらけの思想、思惑、反権力のパフォーマンスと反対派のテロもどき阻止闘争によって変更できないのは、法治国家では明々白々である。

 ③昨年12月の最高裁判決で翁長知事の埋め立て承認取り消しは違法と判断され、埋め立て工事は再開された。今後、県の辺野古移設工事に関わる嫌がらせや訴訟は、無駄な税金を使うだけで、結論は既に出ている政治ショーでしかないのだ。

 ④昨年、県議会議員選挙で那覇市区から保守を裏切った2人が「オール沖縄」の新風会から出馬し、大手企業グループの支援を受けたのに落選した。新風会の溶解が始まっている。

 ⑤昨年1月の宜野湾市長選、今年1月の宮古島市長選に続いて浦添市長選で保守系「チーム沖縄」の現職が再選した。松本哲治・浦添市長は、前回の那覇軍港移設反対の公約について「国・県・那覇市と歩調を合わせて西海岸発展に寄与し、しかもハワイをしのぐビーチリゾートの壮大なロマン(実現可能だ)の公益を優先する」と市民に涙ながらに軍港受け入れについて丁寧に説明し「公約変更の責めは一生負います」と詫(わ)びた。その素直な姿と、松本市長の「前進前進」と訴えるエネルギーが市民の賛同を受け、歴史的な大勝利となった。続く、4月のうるま市長選も「チーム沖縄」の現職が圧勝した。

 ⑥揺るぎない国家観、自国の歴史、文化、民族に誇りを持ち、国民を強力に善導して行くのが真のリーダーである。理念、政策も曖昧模糊(もこ)で選挙さえ勝てばよいとの大衆迎合主義では有権者の御用聞きにしかなれない。

 共産党は、戦前の共産コミンテルン時代からマルクス・レーニン主義、唯物史観の暴力革命、反米、反天皇制、自衛隊解体の左翼革命志向の党綱領も不変である(現在はソフトなふりをしているが…)。故に昨年の国会でも公安庁は、共産党はいまだに要査察団体であると証言している。南シナ海の実効支配に成功した中国は、琉球独立で狂奔している非日本人グループの動きを大歓迎し、ついには東シナ海、琉球列島を「明」「清」の時代に戻す時が来たと共産党機関誌で報じている(福州・中国の名誉市民の翁長知事は容認しているようだが…)。

 翁長知事は、いつまでも平行線にしかならないイデオロギー論争や古琉球時代への憧憬(しょうけい)など、1609年以来の大和への恨みつらみと大東亜戦争後の沖縄の近世史だけにしがみつく曖昧なアイデンティティーの主張で国との溝を深めている。日米関係、そして、アジアの平和崩壊を志向している中国に抗議すべきだ。現実的に妥協も前進もしていくのが政治、行政を司(つかさど)るリーダーの要諦であろう。

 ⑦那覇空港の第2滑走路埋め立てで辺野古の数倍の珊瑚(さんご)が消えるのに、翁長知事は黙っている(那覇市議会では、与党の共産党、社民党、社大党は埋め立て反対を表明している)。那覇軍港の浦添移設は新基地建設であり、広大な珊瑚海域が消える可能性があることについて翁長知事はどう対応するのか。中城湾港の人工島づくりで消える珊瑚は問題ないのか。翁長知事の説明が待たれる。

 ⑧残された翁長知事の手段は、10億円以上の税金を使う「県民投票」か、前県政の辺野古埋め立て「承認撤回」か、あるいは絶対に勝てるはずのない「訴訟」の連発しかない。「県民投票」については、共産党がしきりに煽(あお)っているが、その必要性は全くない。仮に県議会で投票条例の補正予算(10億円以上になる)が成立しても、「チーム沖縄」の市町村長らが県からの投票事務委託を拒否すればジ・エンドだろう。「撤回」については公共工事遅延を含めて翁長知事個人に数百億円の損害賠償が生じてくる。「訴訟」騒動は、反対派の留飲が下がるだけで200%負ける。翁長知事が辞職し、本人が再出馬する選挙の芝居にわれわれは付き合っている暇はない。どうか県民を巻き込まず、翁長雄志1人で相撲を取ってください。

(にしだ・けんじろう)