法治国家否定する翁長知事
自己決定権を拡大誇張
地元辺野古住民の民意を無視
9月16日の辺野古移設をめぐる福岡高裁那覇支部の判決は、法治国家と民主主義、地方自治体の本質、さらには普天間飛行場の危険性の除去、東アジアの平和安全の確保、そして米軍の海兵隊の効率的運用の軍事論と沖縄の地政学的位置、米軍基地の負担軽減への前進などの安全保障面を詳細で具体的で分かりやすく説明している。真摯(しんし)に惑(まど)っていた県民は留飲の下がる思いをしたに違いない。
民主主義国家、法治国家とは、憲法、外交条約、国内法、都道府県条例、規則によって全てが決定され、運用されるのであり、首長の思想信条によって許認可の行政行為が左右されるのであれば、民主主義が崩壊するのは必至だ。今回争われた裁判は、あくまでも「公有水面埋立法」の要件に適合しているか否かの行政手続きを審査する県土木建築部の行政手続きである。
既に2010年に、国、県、名護市、地元の久辺3区の自己決定権の範囲で辺野古移設の合意が成立している。今さら、翁長雄志知事の政治的プロパガンダによって、しかも、知事が恣意(しい)的に集めた反日、反体制派のチームでしかない「第三者委員会」が何の権能権限によって前県知事の埋め立て申請認可に瑕疵(かし)があると騒ぐのか、笑止千万の政治ショーでしかない。
住宅などの建築確認申請の場合は、建築基準法など関連法の定める要件が満たされているなら、行政は認可しなければならない。申請者が、首長の思想信条に反する人物との思惑で認可申請を拒否し、または取り消すことはできない。いかなる思想も表現も言論も許されている民主主義国家において、順守しなければならない行政の三大原則がある。いわゆる「中立」「継続」「安定」は判決主旨にもうたわれている。
地方自治体の首長が人気取りを狙って、国会で(毎年度)決定されている所得税への基準税率よりも市町村税を低くすると、その減額分は(予算に余裕があるからだとの理由で)地方交付税をカットする措置によって、首長の政治パフォーマンスが牽制(けんせい)されている制度も併せて理解いただきたい。
翁長知事は、「沖縄の自己決定権は否定されている」と誤ったメッセージを喧伝(けんでん)している。確かに、1999年に成立した「地方分権法」によって、国と地方自治体は「対等」と位置付けられているが、ただし、外交、防衛は「国の専権事項」と明確に規定されている(判決にも明示)。
仮に、石垣、与那国、竹富、宮古島の首長に国、政府と同様の自己決定権が外交・防衛で認められているとなると、尖閣問題だけでも恐ろしく寒気がする。卑近な例で、中国の強盗行為で実効支配されている南沙諸島を元に戻すには、中国に戦争を仕掛けるしかない。近未来には軍事、経済で米国をしのぎ世界一の帝国覇権国家を目指している軍事大国の中国と戦える国は南シナ海周辺諸国やアジアに存在しない。むしろ中国は実効支配を「戦争」の成果として国際社会に認知させる機会到来と待ち受けている。だからこそ国際仲裁裁判所の判決を「紙屑(かみくず)」と無視し、軍事拠点を構築(中国政府の公式コメント)を強化しているのだ。
残念なのは、南シナ海関連諸国の首脳が中国側の利権提供と恐喝に怯(おび)えているかのように、中国に媚(こ)びる動きを始めており、極めて深刻な事態が惹起(じゃっき)している。この事例が国際政治の現実である。幸いにも沖縄では先島の首長が冷静沈着に対応しているからいいものの、平和ボケ、9条ボケしている日本人、とりわけ、中国に文句も発しない翁長知事をはじめ革新政党、進歩的(?)文化人の「アジア共同体構想」などをのたまわっている皆さんは、チベット、ウイグル大量虐殺などの中国の現代史を勉強して、中国に利用される事実を理解すべきだ。われわれも相当な覚悟で明日に備えなければならない。
昨今、懸念されるのは、反日、反米、反体制、自虐史観のグループが「琉球独立」うんぬんの狂想の動きをしている。この動きに人民日報は、諸手(もろて)を挙げて歓迎し、「明朝、清朝時代に東シナ海を戻す議論の機会が来た」と報道している。わが日本はどうなる。地政学的にその中心に位置する沖縄なのに、地元マスコミにあおられ、理念も哲学もない。結果として売国奴になりかねない虚(むな)しい「オール沖縄」の風邪患者とどう対峙(たいじ)するのか。
辺野古や東村高江の現場での反対派の阻止行動は無法テロもどきである。その団体(全国の新左翼、共産党が主流らしい)が、翁長知事と地元マスコミの扇動で「辺野古『新基地』建設」は沖縄の民意に反すると騒いでいるが、うつろいやすい民意民意との合唱の前に、わが国は「法治国家」であることを認識すべきだ。しからば、宜野湾市で保守の佐喜眞淳市長が圧勝したのをどうみる。普天間固定化にしかならないオール沖縄批判のサイレント・マジョリティーが大勝利のエネルギーだった。辺野古移設を合意している地元辺野古住民の意思は民意ではないのか。普天間飛行場の危険性の除去、米軍基地の整理縮小には唯一、辺野古移設の早期実現しかない。
(にしだ・けんじろう)