自壊が始まる「オール沖縄」
追い詰められた翁長知事
宜野湾市長選佐喜真氏圧勝で
今年初めの重要選挙として1月24日に投開票された沖縄県宜野湾市(人口9万7千人)の市長選挙は、自民党と公明党が推薦した現職の佐喜真淳氏(51)が圧勝した。対立候補の新人、志村恵一郎氏(63)は、翁長雄志県知事を先頭に「オール沖縄」なる野合集団の応援を受けたが、2万1811票しか獲得できず、2万7668票の市民票を確保した佐喜真氏にざっと6千票の大差をつけられた。
選挙の結果、勝利した保守陣営は強固な「自公」体制に改めて自信を深め、敗れた「オール沖縄」は、責任論をめぐって自壊作用を深めつつある。
一地域レベルの市長選挙にも拘わらず米軍普天間飛行場問題を抱えた宜野湾市の選挙とあって全国の注目を集め、国政選挙並みの激しい戦いが演じられた。平成26年11月の知事選挙で保守陣営から寝返って共産党革新陣営と野合して当選した翁長知事が、公務そっちのけで連日、志村陣営の陣頭指揮を執り、国の政策と真っ向から対立する「辺野古新基地反対」を掲げた選挙戦だったために、「日本政府と沖縄県の代理戦争」とまで揶揄され、総力戦が展開された。
それだけに敗北した翁長知事をはじめとする「オール沖縄」陣営の責任は免れないだろう。とりわけ知事の公務をほったらかして「選挙人間」とうそぶきながら市長選挙に張り付き、挙げ句の果ては選挙違反と疑われる戸別訪問を堂々と開陳した翁長知事の罪は重い。戸別訪問の実態はNHKテレビでも報じられ、宜野湾市近隣の浦添市民から警察に刑事告発される「知事の失態」まで明らかになっている。
また、同知事は今回の敗北した市長選と今年7月予定の参院選沖縄選挙区の候補者選定でも主導的役割を果たしており、なおのことその責は大きい。
沖縄県関係者によれば、翁長知事は宜野湾市長選挙に勝利して、「辺野古反対」で一致する名護市長をふくめ、県、宜野湾市、名護市の三者で「翁長流3本の矢」を組み、全国や米国に反対行脚するシナリオがあったようだ。
当然、「宜野湾は絶対に落とせない選挙」と位置づけていただけに現職・佐喜真市政に対しては、選挙前から陰に陽に圧力と難癖(なんくせ)をつける言動をとっていた。
一説によると、西普天間地区の返還跡地に移転する琉球大学医学部付属病院に対して翁長県政がくちばしをはさみ、全国でも初となる重粒子治療施設業務の開設阻止で副知事が暗躍、周辺環境の健康関連を持ち出して疑問符を突きつけるなどしている。また、琉球大付属病院の人事に触手を伸ばし、翁長知事と昵懇(じっこん)の那覇市内大手病院グループと結託して、特定の大学チームを同病院に送り込む戦略が潜むという。
つまり、琉球大付属病院の実質的な乗っ取りを県政が計ろうというわけだ。西普天間地区への琉球大付属病院移転は、2000億円規模の大事業が見込まれており、実現すれば佐喜真市政の高い評価につながる。
普天間返還跡地へのディズニー・リゾート関連施設誘致構想など佐喜真市政の手柄になる話は、翁長県政にはおもしろくない。
だから佐喜真市政の政策をことごとくつぶして、選挙戦を有利に導こうともくろんだが、宜野湾市民の確かな目は、こうしたなり振り構わない「翁長戦略」を許すことなく、圧倒的な差をもって「基地の固定化を避けたい」とする佐喜真氏を選んだ。
翁長知事とマスコミに話を移そう。地元紙の琉球新報、沖縄タイムスともさすがに敗北陣営の翁長知事の選挙戦略・戦術、手腕・力量をほめる論調はない。
選挙の翌日、テレビでは「オール沖縄が崩れたのでは」と質問した記者に対して、県庁のエレベーターに乗り込む翁長知事が「あんたが判断したらー」と捨て台詞をはく場面が放映された。冷静さを欠いた同知事の態度に県民多数はあきれた。この場面はタイムス紙の選挙連載記事でも報じられ、――オール沖縄の中心翁長雄志知事、「顔色を変え」「あんたが判断しなさい」といらだちをあらわにしていた――、と書かれた。
また、同紙は25日付紙面で「知事の訴求力低下示す」の見出しで沖縄国際大学、佐藤学教授の評論を掲載している。いつもは知事応援団のはずの同教授は、「辺野古に反対するオール沖縄側の候補者選考から選挙戦まで、翁長雄志知事が前面に立った以上、翁長知事への審判と取られることは避けられない」と辛口を浴びせている。
宜野湾の革新側は、元市長の伊波洋一氏を市長選に持っていきたかったが、「ツル(知事)の一声」で志村氏と入れ替わり、伊波氏は7月の参院選候補に回ったようだ。
その伊波氏は選対本部長代行として、市長選に関わった。新報紙の選挙連載によると、伊波氏に対してオール沖縄会議共同代表の呉屋守将氏(企業の金秀グループ会長)が、翁長知事、国会議員、県議ら選対幹部が居並ぶ席で「市長選挙に負けたら参院選を辞退すると明言しなさい」と詰め寄られた。
知事や「オール沖縄」が参院選に担ぎ出しながら市長選にからめて「候補を辞退しなさい」と面罵されてはたまらない。この先、「オール沖縄」の候補者差し替えがあるかもしれない。「オール沖縄」の自壊作用が現実味を帯びてきた。
(にしだ・けんじろう)






