辺野古基地建設を推進せよ

竹田 五郎軍事評論家 竹田 五郎

中国側に「回収」の狙い

沖縄防衛のため海兵隊必要

 5月18日付東京新聞は1面トップで、「3万5000人『屈しない』」と、特別大書して、辺野古基地建設反対の沖縄県民大会の状況を報じた。参加した作家の佐藤優氏の所見を後日、同紙の「本音のコラム」に掲載している。翁長(おなが)県知事は、沖縄の方言である「琉球語」で「沖縄人をなめるんじゃないぞ」という意味の批判をしたといい、沖縄では国家公務員を含め辺野古新基地建設の抵抗を強化すると述べている。

 「日経紙」5月の世論調査によれば、移設反対は4月より1%増の48%、賛成は3%減の33%であった。政府は、法に基づき粛々と整備を進めると決意は固い。私も沖縄の日本復帰1年後、約1年半の短期間ではあったが、南西航空混成団司令として勤務し、知人も多く、沖縄県民の心情は理解できる。しかし、その後の増大する中国の脅威を予測すれば、同基地の建設は、沖縄のためにも必要と信じる。

 これより先、5月8日付「産経紙」は、「在沖縄米海兵隊の抑止力」と題し、慶応大准教授の神保謙氏と、防衛庁運用局長、官房副長官補(安全保障・危機管理担当)などを歴任した元官僚の柳沢協二氏とのインタビュー「金曜討論」を掲載している。前者は「海兵隊は今や日本の防衛のために非常に重要」として辺野古基地建設に賛成である。一方、後者は海兵隊駐留が「沖縄でなくてはならない軍事的合理性はない」として、反対である。読み比べた読者は反対派も増加しよう。何故なら「地元から歓迎されない基地は能力を発揮できない…今後、普天間をめぐる混乱が広がれば米国の反応も変わってくるだろう」と述べているからである。

 一般に読者はこのようなことに認識が浅く、柳沢氏の前歴を重視し、また「沖縄は気の毒」と情に流されやすい。神保氏の論は、前半に「日本周辺では、東シナ海のグレーゾーン事態や朝鮮半島の不安定化の可能性があり、沖縄の位置を考えれば、戦域内に短時間内で展開できる海兵隊がいることの意義は大きい」「海兵隊の実動部隊が沖縄にいることは、南西方面への米国の安全保障上のコミットメント(確約)を保証する極めて重要な要素になる」と述べている。編集による見出しは「海兵隊は日本防衛の中核」とした。

 が、これは「海兵隊は沖縄侵攻に対する抑止力」とし、先ず沖縄米海兵隊が沖縄防衛に必要であり、その後、日本防衛に不可欠なことを述べるべきであろう。

 尖閣問題が過熱した時期、中国では、デモ隊の先頭に掲げる横断幕に「沖縄奪還」と大書してあったが、沖縄タイムス、琉球新報の地元2紙はこれを何故か報道しない。未だに県民は中国の野心を知らないのだろうか。以前本欄でも紹介したが、中西輝政京大名誉教授は中国の「環球時報」や、「対日平和条約における領土部分問題とその主張に関する要綱素案(中国外交部公表)」を分析し、「琉球回収は中国共産党の大方針だ」と断言している。

 5月27日付「読売紙」は、「中国の軍事戦略」と題する中国の国防白書を扱った。ここで、「白書は、『予見できる未来において世界大戦は起こらないが、世界は依然として現実的・潜在的な局地戦争の脅威に直面している』との認識を示し、特に『…領土主権を断固守り抜く』と強調。陸上戦略重視だった中国軍の思考を海上重視に切り替え、海軍力の増強を進める方針を打ち出した」と報じた。

 「日経紙」も同じく「中国、海軍重視に転換/南シナ海念頭に」との見出しで、「『近海防御』から、『近海防御と遠海護衛の融合』に改める必要性を強調した」と報じている。これらの記事だけを見た読者は、中国海軍の実力評価を誤るのではあるまいか。

 顧みれば、中国は独立後、ロシア等接壌(せつじょう)国との対応、台湾独立を支援する外国軍隊の阻止を優先し、主として陸戦力を重視し、海空戦力の近代化は遅れ、海軍は沿岸海軍の域を出なかった。昭和57年(1982年)、”小平氏指導の下、第1列島線(九州―沖縄―台湾―フイリッピン―ボルネオ)、及び第2列島線(伊豆諸島―小笠原諸島―グアム―ニューギニア)を戦略防衛ラインと定め、海軍力を増強し、近海海軍ヘ、さらに遠洋海軍への拡大、近代化を企図し、その完成を平成32年(2020年)としている。5年後には、西太平洋における米国の制海・空権も絶対とは言えなくなろう。

 また、南シナ海、インド洋沿岸諸国に拠点を連携する「真珠の首飾り」や、最近、南シナ海に造成している人工島による「海の万里の長城」建設も、米軍に対する接近阻止戦略の一環であろう。

 沖縄海兵隊は日本防衛だけが任務ではない。現米国政権は「世界の警察官の地位を放棄」したが、アジアは勿論、世界各地の平和の維持、自由、民主主義の普及のため行動する使命を自負しているようで、中国の国際法無視、力による「中華帝国復活」を強く警戒している。このため、日本の積極的平和主義を高く評価し、信頼を高めている。

 もし辺野古基地建設中止となれば、その信頼を失い、対中国抑止力を低下させ、喜ぶのは中国である。沖縄の中国化は断固として排除すべきである。県民も中国の野望と脅威を確認し、辺野古基地建設を受諾されるよう熱望する。

(たけだ・ごろう)