沖縄慰霊の日、国民皆で冥福を祈りたい


 沖縄県はきょう、沖縄戦の全戦没者を悼む「慰霊の日」を迎えた。最後の激戦地となった沖縄本島南部の糸満市摩文仁にある平和祈念公園では安倍晋三首相も参列し追悼式を行う。
 沖縄戦では沖縄県の一般人約9万4000人の命が失われたが、北海道、福岡、東京、兵庫、愛知など全国から参戦した戦没者が7万人近くもいる。沖縄県が制定した日ではあるが、国民一人ひとりが戦没者の冥福を祈るとともに恒久平和への誓いを新たにする日としたい。

事実の前に謙虚さを

 70年前の4月1日、米軍は首里にある日本軍司令部を目指して、沖縄本島に上陸を開始した。それから6月23日までの間、物量で圧倒した米軍は約1万2000人の死者を出しながらも攻勢を強めた。

 これに対し日本側は、全国から軍人を動員するとともに、神風特攻隊を出撃させ、戦艦大和を本島に向かわせたが途上で撃沈された。沖縄県民の苦労は筆舌に尽くし難いものであり、衷心から冥福を祈りたい。それと同時に、日本としては沖縄防衛を本土防衛の最前線と位置付け、総力戦で戦った。決して沖縄を「捨て石」にしたのでないことを改めて確認したい。

 慰霊で大切なのは、事実に反することを用いての一方的なミスリードを避けることだろう。沖縄戦で慶良間(けらま)諸島座間味島の守備隊長を務めた元陸軍少佐の梅澤裕(ゆたか)氏を「集団自決の軍命を下した張本人」として地元マスコミなどが非難したが、軍命の証拠がないことが明らかになった。この事実を前にして謙虚に反省することがなければ慰霊をすることにはなるまい。

 名護市辺野古への米軍基地移転反対を公約とする翁長雄志知事は「県民自ら差し出した基地はない」と語った。だがそうだろうか。「村興しのために米軍基地を誘致したい」と再三求めて村長や村議会が一致して誘致を成功させたのが、今の辺野古にあるキャンプ・シュワブなのである。すべてを「米軍の銃剣とブルドーザーによる土地接収」として反米感情を煽(あお)り、基地移転阻止を訴えることも事実に基づかないのだ。

 昨年の追悼式には辺野古埋め立てを承認した仲井真弘多知事が出席したが、今年は翁長知事に代わった。安倍首相との会談の予定はないという。辺野古移転問題で対立しているためであることは間違いない。

 翁長知事は「オール沖縄」の代表と自認しているが、昨年11月の知事選での得票数は約36万票で、全有権者の33%にすぎない。移転賛成と反対でない候補の票を足せば約33万票であり、残る約40万票は棄権票で説得次第では理解を得られる可能性のある層なのだ。翁長知事が強引に事を進めようとするほど政府と乖離(かいり)することになろう。

基地の重要性再確認も

 中国や北朝鮮などが軍備拡張する中、アジア太平洋地域でリバランス(再均衡)政策を展開する米国にとって沖縄米軍基地の重要性はますます高まっている。日米同盟の強化を図り同地域の平和と安定を目指すわが国にとっても同様だ。そのことも併せて再確認する日としたい。

(6月23日付社説)