家庭は教育の出発点
幼少期に人格の基礎形成
「支援法案」を批判する朝・毎
家庭での教育について国や自治体が支援の責任を負うとする「家庭教育支援法案」を、自民党が通常国会に提出すべく準備中であることについて毎日新聞は、公権力が家庭に介入していくとも受け取れると批判し、「家族は互いに助け合わなければならない」とうたう同党の改憲草案と合わせて、「家族生活での個の尊厳をうたう憲法24条の改正への布石ではないか」との批判記事を載せている(2016年11月3日付朝刊の社会面トップ)。
また朝日新聞は、10月22日付朝刊に、家庭教育に国や自治体が関与しようとする動きは、近年、強まりつつあるとする同様の記事を掲載している。
親の学びなどを定めた、家庭教育支援条例が施行され、県がトレーナーや進行役を育成し、保護者や中高生向けの講座を開いているとし、法案が成立すれば、条例化という形で全国に広がる可能性があると指摘している。
都市化や核家族化などによって親たちが身近な人から子育てを学ぶ機会が減るなど、家庭教育を支える環境が悪化していることから、国や自治体が責任をもって家庭教育を支援するのが、家庭教育支援法案の趣旨である。
教育はその出発点となるのが家庭で、学校以前の幼少期に人格の基礎が形成される。
1948年の国連第3回総会で採択された世界人権宣言は、その6条3項において、「家庭は社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する」と規定している。
毎日新聞の記事は、家族重視が個の尊重を損なうかのように記述しているが、実際は逆で、家庭があって初めて「個の尊重」が守られるのである。
国際人権規約も「できる限り広範な保護及び援助が、社会の自然かつ基礎的な単位である家族に対し、与えられるべきである」と家庭への支援を定めている(人権A規約10条1項)。
旧教育基本法は、家庭教育についてほとんど触れていなかったが、改正教育基本法は「家庭教育」の項を設け(10条)、「保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」とし、「生活のために必要な習慣を身につけさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努める」と規定している。
また国と自治体は、「家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供、その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずる」と規定している。
これを受けて文科省は、子育てサポーター、リーダーなどの人材養成や専門家からなる「家庭教育支援チーム」による相談や学習の場の提供などの支援を行ってきた(16年11月現在、全国153自治体で家庭教育支援チームが機能している)。
この流れを確固たるものにするのが家庭教育支援法であり、同法案は、家庭教育を「国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる」と規定し、文科相が「家庭教育支援基本方針」を定め、これに基づき自治体も基本方針を作成し、地域住民はこれに協力すると当然の事理を定めているのであって、前記毎日、朝日の記事は、意図的な反対記事と言わねばならない。
法案は、家庭教育を「国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる」と規定し、その上で、まず文部科学相が「家庭教育支援基本方針」を定め、これに沿って自治体も基本方針を定め、地域住民も国と自治体に協力するよう努めるとしている。
同法案の骨子は、①保護者が子に社会との関わりを自覚させ、人格形成の基礎を培い、国家と社会の形成者として必要な資質を備えさせる環境を整備する②保護者が子育ての意義を理解し、喜びを実感できるようにする③国と自治体、学校、地域住民などの連携の下、社会全体で取り組む④文部科学相は家庭教育支援基本方針を定める。自治体は実情に応じて基本的な方針を定めるよう努める⑤国と自治体は家庭教育に関する保護者への学習機会の提供や相談体制の整備に努める―と定められており、家庭教育については、政府の教育再生実行会議も、学校の負担を減らすためとして、今後、家庭の役割を議題にするとしている。
アメリカでは1981年1月に就任したレーガン大統領の下に同年8月、「卓越した教育に関する全米委員会」が設置され、調査・分析を経た後、83年4月「危機に立つ国家」と題する報告書を提出した。
アメリカは、「わが国の繁栄と安定、さらには文化の礎となるもの」は、「教育」であると捉え、経済を含めた国の衰退、すなわち「危機」の原因も「教育」にあるとしている。
(あきやま・しょうはち)






