参加型から訪問型の「とどける」支援へ

「全国家庭教育支援研究協議会」で事例報告会

 孤立する子育て家庭の親による虐待が増え続け、虐待を未然に防ぐために、学校・家庭・地域の連携による「家庭教育支援チーム」の役割が大きくなっている。参加型から訪問型の「届ける」支援へ、地域のニーズに合わせた家庭教育支援の実践事例をリポートする。(横田 翠)

参加型から訪問型の「とどける」支援へ

訪問型支援について語る、一般社団法人「家庭教育支援センターペアレンツキャンプ」代表理事・水野達朗氏

 毎年1月末、家庭教育支援に関わる行政担当者やNPO法人等の関係者が集まり、「全国家庭教育支援研究協議会」(文部科学省主催)が開かれる。今年は1月30、31日の両日、東京・国立オリンピック記念青少年総合センター内で、基本的生活習慣づくりと訪問型家庭教育支援の事例報告会と交流会が持たれた。

 平成23年に地域で家庭を支える「家庭教育支援チーム」制度がスタート、全国535チームに広がった。地域の子育てサポーターと教員OB、PTA等の教育関係者や民生委員、児童委員などの福祉関係者等で構成される「家庭教育支援チーム」の主な業務は、保護者への学びの場の提供、地域の居場所づくり、訪問型家庭教育支援である。

 家庭教育支援と言えば、講座やイベントに来させる参加型の支援が多い。ところが最も支援を必要とする困難家庭はイベントや講座に足を運べない。そこで、支援員が出向いていく訪問型の「届ける」支援に力を入れ始めている。

 茨城県坂東市の事例では企業にも出向く徹底した取り組みぶり。子育てや、しつけに悩みや不安を抱える保護者向けの家庭教育学級(ハッピー学びスクール)を3歳児健診時のほか、認定こども園・幼稚園、小・中学校、さらに企業に出向いて行っている。家庭教育への意識付けの土台の上で、孤立する子育て困難家庭や外国籍の子育て家庭に対しては個別訪問を行い、学校と連携しながら不登校児の学校復帰につなげている。

 大阪府大東市では、教育委員会に支援チームを設置、市内全小学校12校区の小学1年生の全家庭訪問を実施した。小学校入学時期は環境が大きく変わるため、保護者も子供も不安や悩みを抱えやすい。小学1年生の全家庭に支援員が訪問することで、問題を未然に予防する効果がある。

 大阪府立大学の山野則子教授の調査によれば、子育てで孤立する母親は3割超、全国児童自立支援施設入所児童の約6割が被虐待児という。虐待予防という観点からも訪問型支援は効果が高い。「家庭教育支援チーム」が上手(うま)く機能すれば、地域全体の教育力が上がる。いかに地域人材を集め、養成するかが、共通の課題だ。