中国が香港抗議デモで宣伝工作

 中国共産党が最近、香港の民主派による抗議デモに関して好意的な報道をしないよう国営メディアに命じる内部文書を出していたことが明らかになった。米国へ亡命申請をしている中国人実業家、郭文貴氏が運営するサイト「郭媒体(グオ・メディア)」が公表した。

好意的報道を禁じ「三つの衝突」柱に
国営メディアに文書で指示

 文書は6月12日付で、共産党の国家安全委員会が出したもの。安全委は国内の治安強化を統括する機関で、習近平国家主席がトップを務める。

ビル・ガーツ氏

ビル・ガーツ氏

 文書は「香港人民の民主化と自由の訴えを好意的に報じることを禁じ、世論を導く政府の正当性を最大限に活用する」と指摘。抗議行動を、①「愛国主義」と香港独立との対立②「平和と暴力」との対比③中国の「法律制度」と暴動をあおる勢力の間の戦い-の「三つの衝突」として報じるよう命じている。この三つの衝突は、抗議デモをめぐる中国の宣伝工作の柱でもある。

 宣伝工作は主に、中国共産党機関紙「人民日報」と系列紙、中国国営中央テレビ(中央電視台、CCTV)の複数のチャンネルなどを使って行われている。

 文書は、デモ参加者の数を最小限にし、デモへの大衆の支持が強くないように見せることを求めているものの、170万人(主催者発表)が参加したと最近、報じられるなど、デモが縮小する兆候は見られない。

 また、抗議デモに参加していない「サイレントマジョリティー」と、デモに参加している「若く無知で操作されているグループ」を、「西側の敵に利用されている」グループとして分類するなどの分析も示されている。

人間の鎖

平和的な抗議活動として行われた、参加者が手をつなぐ「人間の鎖」=23日夜、香港・香港島(時事)

 香港政府と警察に対する強い支持があるように見せる宣伝工作も行われる一方で、デモ参加者を「テロリスト」と表現、この言葉はすでに国営メディアなどでは数週間前から頻繁に使用されている。

 また、「報道の中の映像や写真で民主主義、自由に関するスローガンを(掲げた旗などを)できる限り捉える」よう指示しているが、これは、デモが米中央情報局(CIA)の支援を受けているという主張を補強するためのものだ。

 文書は、外国の政治家からデモへの支持が強まっていることを指摘した上で、「これはまさにわれわれが望んでいたことであり、これらを強調した報道をすべきだ。それによって、西側の敵勢力が、破壊と混乱を生じさせようとしている状況を描き出す」としており、抗議デモに欧米諸国が介入しているという印象づくりの必要性を訴えている。

 中国メディアはまた、「デモに対する支持を訴え、デモへの理解を示す」報道もすべて阻止するよう指示。デモ参加者に対する警察による過剰な暴力は「ブロックし、削除」しなければならないとしている。

 さらに「愛国的実業家や芸能界の著名人に、デモへの不支持を表明させる」ことを要求、「世論を誘導するために、既存メディアへの監視を強め、ソーシャルメディアを禁止」することで、抗議デモに友好的な情報が流れないよう命じている。