米司令官、中国の中距離ミサイルは脅威

ビル・ガーツ氏

ビル・ガーツ氏

 トランプ米大統領による中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄表明に当事国ロシアが強く反発する中、米軍司令官は、大量の中距離ミサイルを保有する中国への対抗上、破棄は不可避と主張、地上配備の移動式新型ミサイルの開発の必要性を訴えた。

 米インド太平洋軍のデービッドソン新司令官は上院軍事委員会で、中国の中距離ミサイルの危険性を強調、「中国は、INF全廃条約に加盟しておらず、米国にとって深刻な脅威となる兵器に力を注いできた」と指摘した。

 同氏はまた、「中国の弾道弾の95%以上は、INF全廃条約の下なら保有が許されない」と、中国が大量の中距離ミサイルを配備している点を指摘するとともに、地上に固定されている場合、容易に標的にされてしまうと「ある程度の機動性を備えた地上配備の装備」の必要性を指摘した。

 一方、ロシアのプーチン大統領は20日の年次教書演説で、米国のINF条約破棄を受けて、極超音速兵器などで米国を直接、核攻撃する可能性を示唆した。ロシア軍専門家で元国防総省職員のマーク・シュナイダー氏によると「ロシアが米国を核攻撃で威嚇するのは初めて」。

 プーチン氏は教書演説で、INF条約破棄を非難し、新型の中距離巡航ミサイルSSC8の配備に言及。また、米国が欧州に中距離ミサイルを配備すれば、「(ロシアは欧州だけでなく米国をも攻撃可能な)兵器を配備せざるを得なくなる」と主張した。

 これは、音の27倍の速度で飛行可能な極超音速ミサイル「アバンガルド」を指すとみられ、プーチン氏は、現在、このミサイルを製造中で、年内の配備が可能になることを改めて強調した。