中国軍が衛星破壊ミサイルを配備
中国軍が衛星攻撃兵器(ASAT)を複数の部隊に配備、訓練を行っていることが、国防総省・国家航空宇宙情報センター(NASIC)の報告書「宇宙での競争」から明らかになった。米国の人工衛星を破壊できる兵器であり、宇宙での米国の優位に対抗する狙いがあるものと報告は指摘している。中国軍が、ASATによる攻撃の訓練を実施していることが明らかになるのは初めて。
複数部隊が訓練、宇宙での米優位に対抗
報告は中国のASATについて「低軌道上の米国、同盟国の衛星を破壊できるミサイルであり、情報・監視・偵察・通信衛星が攻撃を受ける可能性がある」と警告した。
米空軍は6の衛星群、12の衛星システムを運用している。通信、指揮・管制、ミサイル警報、核爆発探知、天気、全地球測位システム(GPS)に使用され、国家安全保障になくてはならないものだ。
報告書は「(中露など敵対国が)先進宇宙技術を戦略に取り入れ、米国の優位に対抗し、宇宙大国としての地位を固めようとしている」と指摘、「サイバー、電子、指向性エネルギー、衛星破壊ミサイル、宇宙配備兵器による複数の攻撃方法によって、さまざまな被害を及ぼすことが可能だ」とその脅威を強調している。
ミサイルの種類、訓練に携わっている部隊の詳細は示されていないものの、米国防当局者は、米軍は通信、情報、ミサイルと爆弾の精密誘導などを衛星に大きく依存しており、二十数回程度のミサイル攻撃で、中国は米軍の作戦に大きな混乱をもたらし得ると指摘した。
中国のASATミサイルは、射程によって数種類あり、地対空ミサイル「紅旗(HQ)19」派生型のSC19は、2007年と10年の試験発射で使用された。13年には、新型ミサイル「動能(DN)2」の試射を行い、昨年2月、能力を向上させたDN3の試射が行われた。
コーツ国家情報長官は昨年2月の議会証言で、中国のASATが「数年で初期作戦能力(IOC)に達する」可能性があると指摘していた。コーツ氏はさらに、中国が部隊を組織し、地上発射衛星破壊ミサイルの「初期運用訓練」を実施したと証言していた。
中国軍専門家で国際評価戦略センター上級研究員のリチャード・フィッシャー氏は、NASIC報告は、中国軍がASATの存在をアピールした07年から、ASATミサイルを複数の部隊に配備するまで進展していることを米政府が確認したという点で重要だと指摘した。
フィッシャー氏は「中国軍がすでに、米国の軍民の衛星を標的とするASATの部隊を持つ一方で、米国では、それに匹敵する宇宙対抗能力が組織化されていない。中国による積極的な宇宙軍事化に対抗する術はない」と指摘した。
また、オバマ前大統領が宇宙での軍事力開発にイデオロギー的理由から反対したと非難、トランプ氏が決定した宇宙軍創設について、「米国にとって緊急に必要な防衛的能力」と強く支持した。






