米艦艇の台湾海峡航行は中国公海主権主張に対抗

ビル・ガーツ

 米海軍の艦艇2隻が22日、台湾海峡を航行、台湾周辺、南シナ海での主権の主張を強める中国を牽制(けんせい)することが狙いとみられるが、南シナ海で米艦艇に中国艦艇が異常接近するなど、このところ中国周辺で米中両国軍間の緊張が高まっている。

 米海軍のローガン報道官によると、航行したのは、駆逐艦「カーチス・ウィルバー」と巡洋艦「アンティータム」。ローガン氏は、「国際法に則(のっと)った」航行であり、「自由で開かれたインド太平洋への米国の決意を示すものであり、今後も国際法が認めるあらゆる場所で、飛行、航行、作戦行動を実施する」と、作戦の継続を強調した。

 米軍の艦艇が台湾海峡を航行するのは今年に入って7月以来2度目。中国による沿岸海域の公海への主権主張に対抗するため米軍は、空と海での活動を活発化させている。

 中国はこのところ、台湾周辺での航空機の挑発的な飛行を繰り返してきたが、台湾政府によると、この数週間、中国軍用機の飛行は減少しているという。

 今月初め南シナ海で、中国の駆逐艦が米駆逐艦「ディケーター」に異常接近し、海域からの排除を試みたばかり。中国は南シナ海の軍事化を進め、今年に入って、対艦・対空ミサイルを配備した。

 ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は中国艦艇の異常接近を受けて、「米国は開かれた国際海上路を守る。中国はこれを理解する必要がある」と非難、中国に対する対決姿勢をあらわにした。

 米国は9月、ロシアの最新鋭地対空ミサイルシステムS400と最新鋭戦闘機スホイ35を購入したとして、ロシア制裁強化法に基づいて、中央軍事委員会装備発展部と李尚福部長を制裁対象に指定したばかり。

 これを受けて中国は、北京での軍事対話を拒否、米国を訪問していた海軍大将を呼び戻し、米軍艦艇の香港寄港を拒否するなど反発を強めている。

 マティス国防長官は今月中旬、拡大東南アジア諸国連合(ASEAN)国防相会議のためシンガポールを訪問、18日には魏鳳和国防相と会談し、両国関係が緊張する中で、軍事衝突回避への意思を確認したばかりだ。

 マティス氏はシンガポールに向かう途上、米国と中国は「二つの太平洋大国、二つの経済大国」とした上で、「いつか両国が互いの領域を犯す時が来る。そのため、発展的に両国関係を維持していく道を見いださなければならなくなる」と危機感を明確にした。