中国含む新たな枠組み必要、新START交渉で米特使
米露間の新戦略兵器削減条約(新START)は2021年2月に有効期限を迎える。ロシア政府は現状のまま延長することを求めているが、米政府は中国が参加しなければ更新を受け入れない意向だ。4月にトランプ米大統領が武器管理問題大統領特使に任命したマーシャル・ビリングスリー氏は、ロシア政府は新STARTの延長を考える前に、「中国を交渉のテーブルに着かせなければならない」と主張、中国を含む3カ国での新たな枠組みの構築を求めていく構えだ。
ビリングスリー氏は、「現行の条約には多くの問題点があるが、中でも重要なのは中国が参加していないことだ」と述べた。
また「新START(を更新できるかどうか)はロシアに懸かっている」と主張。「中国がしていることが、米国だけでなく、ロシアにも向けられていることは明らかだ。ロシアはこの点を認識すべきだ」と指摘し、中国の短距離ミサイルを含む新たな核兵器システムにロシアは関心を示すべきだとの認識を示した。
中国政府は、保有兵器が米露よりも大幅に少ないことを理由に、新たな枠組みへの参加を拒否している。中国外務省の耿爽・副報道局長は4日の会見で、「武器管理をめぐって中国について話し合うことは筋違いであり、核削減交渉をめぐる3カ国交渉に中国は参加しない」と交渉要求には応じないことを明言した。
ロシアのプーチン大統領は、5年間の条約延長を求めており、7日にトランプ大統領と新STARTをめぐって電話協議をしたばかりだ。
ビリングスリー氏は、中国が大国の仲間入りをしたいなら、交渉に参加すべきだと主張、「安全を保障し、情報を公開し、透明性を高めるためのプロセスに取り掛かるべきだ」と、核兵器の保有数など、戦略兵器の情報の公開を求めた。
中国は、抑止力が損なわれると核戦力の情報の公開を拒否している。少なくとも250発の戦略核弾頭を保有しているとみられているものの、小型核の数は不明だ。戦略核戦力の拡大を精力的に進めており、少なくとも10種類の長・短距離弾道ミサイル、巡航ミサイルを保有しているとみられている。間もなく極超音速ミサイルを配備、新型の弾道ミサイル潜水艦、ステルス戦略爆撃機H20も間もなく配備される見込みだ。
また同氏はロシアが開発している五つの新型兵器が交渉で障害となる可能性があると指摘する。
大陸間弾道弾(ICBM)「サルマート」、極超音速ミサイル「アバンガルド」は現在の新STARTの対象と米国は主張しており、空中発射ICBM「キンジャール」、原子力巡航ミサイル「ブレベストニク」、無人潜水艦も、今後の条約で監視対象にすべきだと主張しており、「新条約では、これらのロシアの新型兵器、開発計画を止め、放棄させるべきだ」と述べた。
ビリングスリー氏は、「中露両国は、条約順守に関してひどい過去を持っている。ロシアは、米国との間で交わしたほぼすべての合意に抵触、中国も数多くの合意に違反している」と主張、新たな条約が検証可能で強制力を持つものでなければならないことを強調した。







