上昇気流
2022年度から高校の国語の内容が変わる。…
2022年度から高校の国語の内容が変わる。これについて「文学作品に触れる機会が減るのは危険」との反応も出始めた。その中には「文学は感性が全て」という根深い通念も含まれる。「文学離れ」によって、人間の感性を育てる機会が失…
「まあ、あがりたまえ」。福島県郡山市に…
「まあ、あがりたまえ」。福島県郡山市に「こおりやま文学の森」がある。その敷地にかつて神奈川県鎌倉市にあった久米正雄邸を移築復元した久米正雄記念館があり、本人の言葉が来館者を迎えてくれる。 1905年に久米はこの町の県…
大根のうまい季節がやって来た。鍋にもいいが…
大根のうまい季節がやって来た。鍋にもいいが、大根下ろしもいい。涙が出るような辛いのを温かいご飯にぶっ掛けて食べる。これほどうまいものはないと思っている。 ところが最近、唐辛子と同様にキューンと鼻を突くような大根に、ほ…
<年は唯、黙々として行くのみぞ>高浜虚子…
<年は唯、黙々として行くのみぞ>高浜虚子。春が過ぎ、猛暑の夏を越え、短くなった秋と伸びてきた冬がせめぎ合う今の季節。師走を間近にした時期になると、毎年同じことを感じるようになった。 時の流れの速くなったことを驚きなが…
京都・伏見区の「伏見稲荷大社」を初めて…
京都・伏見区の「伏見稲荷大社」を初めて訪ねた。「千本鳥居」と呼ばれる数え切れないほどの鳥居をくぐり続けて狭い山道を行くのだが、人の流れに切れ目がなかった。 登坂時は人々が黙々と上っていたが、擦れ違う下山の人たちの英語…
「工場のいつもこの音秋の雨」(中村汀女)…
「工場のいつもこの音秋の雨」(中村汀女)。一雨ごとに冬が近づいているという実感がある。秋の雨が長雨になりやすいのは梅雨と似ているが、梅雨が暖かさを感じさせるのに対して秋雨は触れたものを冷やしていく。紅葉の上に雨が降ると…
国内で出版されたすべての本を収蔵する東京…
国内で出版されたすべての本を収蔵する東京・永田町の国立国会図書館は、本や雑誌などの資料を探す場合の最後の砦とも言える施設だ。蔵書数1200万冊、貸し出しまではできないが、閲覧し有料でコピーができる。最近はウェブにおける…
作家の野間宏(1991年没)がパーティーの…
作家の野間宏(1991年没)がパーティーの乾杯あいさつで長時間演説したエピソードが記録されている。会場の皆がグラスを持って待つ中、ニクソンがどうの、ブレジネフがこうの、べトナム戦争がああのと30分語り続けた。 丸谷才…
東京の三鷹市北野の辺りは住宅地であるが…
東京の三鷹市北野の辺りは住宅地であるが、農家も多く、散歩していると田舎にいるような気分になってくる。今の季節に家の庭先や畑の隅でよく見掛けるのが菊の花だ。 それも厚物や管物や古典菊まであって、栽培を趣味にしている人た…
安倍晋三首相の在職日数が通算2887日となり…
安倍晋三首相の在職日数が通算2887日となり、同じ山口県出身の桂太郎を抜いて歴代最長となった。これに対し、野党をはじめ「長期政権の弊害」ばかり指摘する人々がいるが、本末転倒した議論である。 安倍政権は民主的な選挙で選…
気流子に鑑識眼があるわけではないが、文豪…
気流子に鑑識眼があるわけではないが、文豪の中には俳人としても評価されている人が少なくないことは分かる。俳人の長谷川櫂氏が読売に連載する「四季」で先月上旬、その一人である夏目漱石の句を採り上げた。 漱石の『思い出す事な…
国際原子力機関(IAEA)は、原子力の…
国際原子力機関(IAEA)は、原子力の軍事利用に目を光らせ「平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進」(憲章)するのが目的。IAEAの役割を持ち出すまでもなく、原子力技術の開発は今や人類文明の発展に欠かせない。 …
まだ冬という実感に乏しいが、朝夕に外を…
まだ冬という実感に乏しいが、朝夕に外を歩くと空気がひんやりしていることを肌身に感じる。外出のために衣服を選ぶのにちょっと迷う。日中の日差しもあって、厚着でも薄着でもしっくりこない。その寒暖差は、まさに秋から冬にかけての…
未明に帰宅して急に甘いものが欲しくなり…
未明に帰宅して急に甘いものが欲しくなり、近くのコンビニエンスストアに足を運ぶと「22時閉店」の張り紙。それで甘いものへの願望が消えるわけではない。100㍍ほど離れたもう一軒のコンビニはいつも通り開いていてアイスクリーム…
「古代の饗宴は暴力的だった、それは飢え…
「古代の饗宴は暴力的だった、それは飢えと結びついていたからだ」という学者の記述を読んで虚を突かれた。昔の酒宴が暴力的だった話は知っていたが、根源に飢餓があったとは思い至らなかった。 柳田国男の「酒の飲みようの変遷」(…
俳人の中には保守的な句を作る人もいれば…
俳人の中には保守的な句を作る人もいれば、進歩的な句を作る人もいる。両者から人気のあるのが「鶴」を主宰した石田波郷(1913~69)だ。 俳句で表現できるのは自然か、人間かだが、小説のように言葉を費やして語ることはでき…
「木曽路はすべて山の中である」と始まる…
「木曽路はすべて山の中である」と始まる島崎藤村作『夜明け前』。幕末、維新の政治的動乱の中にあって、森林が日本国土の骨組みの中心にあり続けた様子が、よく分かる。 木曽一帯は尾張藩が支配し、その厳重な管理下に置かれた。そ…
まだ秋と言っていい時期だが、俳句の歳時記…
まだ秋と言っていい時期だが、俳句の歳時記で11月は「冬」になる。初雪や初霜の便りも届き始めている。 水の冷たさを実感するこの頃、今年を振り返るのはまだ早いかもしれないが、記憶に残るのは台風による風水害が多かったことだ…
オリヴィエ・アサイヤス監督のフランス映画…
オリヴィエ・アサイヤス監督のフランス映画『冬時間のパリ』を観た。タイトルからマロニエの枯れ葉散る晩秋から初冬のパリが浮かび、これを観(み)ればパリに行った気分になれるのではないかと試写会場に足を運んだ。 編集者アラン…
恒例の「国語に関する世論調査」(文化庁)…
恒例の「国語に関する世論調査」(文化庁)で、今年は「言わずもがな」が取り上げられていた。とうに忘れた表現だったので、不意を突かれた。「結果は『言わずもがな』」というふうに使われるが、聞いたこともない人が25・6%、聞い…
江戸時代を専門にした歴史学者・故大石慎三郎…
江戸時代を専門にした歴史学者・故大石慎三郎さんが、江戸中期の老中・田沼意次(おきつぐ)の研究を始めたのは、史料の中に奇妙なことがあると気付いたからだ。意次は賄賂好きの腐敗した政治家と言われてきた。 その根拠の一つとさ…
<それは秋らしい柔らかな澄んだ日ざしが…
<それは秋らしい柔らかな澄んだ日ざしが、紺のだいぶはげ落ちたのれんの下から静かに店先に差し込んでいる時だった>。志賀直哉の名作「小僧の神様」の冒頭部分である。余計な説明を省き「秋らしい柔らかな澄んだ日ざし」と書くだけで…
新聞コラムから。「蕪村の句<老(おい)が…
新聞コラムから。「蕪村の句<老(おい)が恋わすれんとすればしぐれかな>は二百数十年も昔の人が詠んだとは思えず、作者名を隠せば平成の作品で通るだろう」(読売「編集手帳」平成21年11月4日付)。 もう一つは小紙・上昇気…