核シェルターに高まる関心
北朝鮮による核・ミサイルの脅威が高まる中、核シェルターや放射能被害などを防ぐ商品への関心が高まるとともに、関連商品を扱う業者が増えている。「平和ボケ」していると言われてきた日本人にも、自分の身は自分で守るという意識が広がりつつあるようだ。
(社会部・石井孝秀)
室内設置型も登場
問い合わせ急増、売上げ4倍の企業も
2000年の創業以来、酸素ルームなどのヘルスケア事業に取り組んできた東京都港区のワールドネットインターナショナル社。11年、福島の原発事故をきっかけに災害シェルターや核シェルターの事業を開始。イスラエル製の空気濾過(ろか)器の販売や大型地下シェルターの建設工事を行っている。
同社のホームページによれば、核シェルターの普及率はイスラエルやスイスで100%、米国82%。唯一の被爆国の日本はわずか0・02%。しかし、今年の売り上げはすでに昨年度の約4倍で、同社の商品を取り扱う代理店も増え続けている。
毎月全国から100件ほどの問い合わせがある中、特に多いのは北朝鮮のミサイルが上空を通過した北海道やミサイル通過を予告された四国からのもの。また、問い合わせが増え始めたのは今年の4月からで、安倍晋三首相が同月13日に参院外交防衛委員会で「サリンを弾頭に付けて着弾させる能力を北朝鮮は保有している可能性がある」と発言した影響が考えられる。
北朝鮮のミサイルや原発事故への不安から、同社の商品を購入して自宅に設置した東京在住の男性(40代)は「家族が家に逃げ込める環境をつくれたことがよかった」と語る。しかし、同社によれば、地下型シェルターを設置しようとして工事を始めても、庭の配管が障害となって穴を掘れなかったり、トラックや重機の入るスペースがないといった原因で、建設が不可能になるケースもある。
そのため、同社では今年から室内設置型のシェルターの販売を始めた。爆風で飛び散ったコンクリートの破片やガラス片などの被害を防ぐことができるため、震災時の避難場所としても役立つ。また、空気濾過器が取り付けられているため、放射能や化学兵器からも身を守ることが可能という。値段は1280万円からで、住宅事情に合わせて広さを自由にカスタマイズできるのも特徴だ。
北の脅威以外のリスクも想定
同社営業部主任の楠美健太さんは「日本は国土面積に対しての原発の数が世界一。北朝鮮の脅威がなくなったとしても、津波や地震などのリスクもある。これを機にリスクの中で生きていることを考える必要がある」と強調した。
栃木県矢板市の川口鉄筋建設では、これまで培ってきた鉄筋工事の技術や経験を生かし、核シェルター事業を始める準備を進めている。
知り合いの設計事務所に声を掛けてシェルターを設計。ミサイル攻撃の対象になり得る米軍基地や原子力発電所などから5㌔圏内には地下型シェルター、5㌔以上には屋外型のシェルターを提案する予定で、鉄筋コンクリート製の外壁は約25㌢で、値段は1480万円からだ。
シェルター建設の受注はまだ先だが、これまでに栃木県内だけで10件以上の問い合わせが来ているという。11月中旬にはモデルシェルターを公開する予定だ。
同社の川口篤史社長は「田舎にはミサイルが飛んできても隠れる大きな建物がない。地方の人にも提供できるものを作りたかった。今後、国でも予算を組んで各地に避難所を設けるべきだ」と訴える。その一方で「(モデルシェルターの)建築の確認申請を出すのに苦労した。シェルターというカテゴリーがなく、今の法律は対応していない」と、シェルター普及上の課題を訴えた。







