深刻な女性への暴力を告発、 ミス・ペルーのファイナリストたち
国内外で大きな反響呼ぶ
ラテンアメリカは、世界でも女性に対する暴力が最も頻繁に行われている地域の一つとなっている。そうした中、ペルーでミスコンテストの出場者たちが「女性への暴力に反対する」との声を上げ、国内で大きな反響を呼んでいる。(サンパウロ・綾村悟)
ペルーの首都リマで先月29日、ミス・ペルーを決めるコンテストの最終審査が行われた。ペルーでは注目度の高いコンテストで、テレビで生中継されていた。通常であれば、金色のドレスに身を包んだ23人のファイナリストたちが、一人ずつマイクの前に出て、氏名やスリーサイズなどを発表する手はずとなっていた。
ところが、ファイナリストたちは、自身の名前と出身地を告げた後、次々にペルー国内で発生している女性に対する暴力を訴え続け、視聴者に大きな衝撃を与えた。
彼女たちのメッセージは、ユーチューブやソーシャルメディアなどを通じて閲覧できる。例えば、こんなショッキングな内容だ。
「過去9年間で女性が犠牲になった殺人事件が2202件発生した」
「今年だけで82人の女性が殺人事件の犠牲となり、156人の女性が殺人未遂の被害に遭った」
「5歳以下の女児が対象となった暴行事件は、加害者の8割以上が家族など近親者によるものだ」
他にも「1万3000人の少女たちが性的虐待の対象となっている」「女子学生の65%が交際相手からの暴行に遭っている」など、女性たちが直面する深刻な状況が伝えられた。
ペルーは、南米でボリビアに次いで女性への暴力事件が多い国とされているが、これまでクローズアップされることはなかったという。最近になって、人気テレビアナウンサーらがパートナーからの暴行を公表するなど社会問題化し、メディアをにぎわせている。
ラテンアメリカ全体でも、女性に対する暴力は近年になって問題視されるようになった。世界保健機関(WHO)による2015年の調査では、女性に対する殺人事件が最も多い国がラテンアメリカに集中。ブラジルでは、16歳以上の女性の3人に1人が、言葉もしくは直接的な暴力の対象になったという衝撃的な数字も出ている(ブラジル・フォーリャ紙報道)。
ミス・ペルーのファイナリストたちによる声明は、コンテスト主催者との協議の上で行われた。最終審査の質問も、通常であれば、趣味や慈善活動などを尋ねられるが、今回は「どうすればフェミサイド(女性を対象とした殺人や虐待)を終わらせられると思うか」「女性を対象とした殺害行為の刑罰は何が相当か」というものだった。
ミスコンテストというイベントを利用した女性暴力に対する抗議は、ペルー国内外で大きな反響を読んでおり、国内最大紙の一つ、エル・コメルシアル紙は「ミス・ペルーたちの抗議が世界中のメディアで注目を集めている」との記事を掲載、反響の大きさを指摘した。
コンテストの主催者で1987年のミス・ペルーでもあるジェシカ・ニュートン氏は、今年のコンテストに出場した150人のうち5人がレイプを含む性暴力の被害を経験していると指摘し、女性に対する暴力がコンテストと無縁でないことを強調した。
中南米では現在、国連などが中心となってフェミサイドを撲滅するための取り組みが始まっており、治安当局と協力して取り締まりや犯罪防止の枠組みを構築している最中だという。






