「いじめ」は犯罪行為である
学校・警察の連携強化を
地域一丸で子供の命守ろう
文部科学省は2016年10月27日、15年度の問題行動調査の結果を公表した。全国の小中高校と特別支援学校で認知されたいじめは前年度を3万6468件上回る22万4540件で、調査が始まった1985年以降で最多となった。
不登校の小中学生は3年連続の増加となる12万6009人で、児童・生徒1000人当たりの割合は12・6人と過去最高を更新した。
15年度に認知されたいじめは小学校が15万1190件。2万8456件増え過去最高となった。中学校は5万9422件(6451件増)、高校は1万2654件(1250件増)だった。
15年度に小中高校から報告のあった自殺事案214人のうち、9人がいじめ問題を抱えていた。
いじめは決して許されないことであり、その兆候をいち早く把握し、迅速に対応することが必要である。
文部科学省ではこれまでも、学校や教育委員会等に対し、いじめの問題への取り組みの徹底を要請してきたが、いじめが背景事情として認められる生徒の自殺事案など、子供の生命・身体の安全が損なわれるような痛ましい事案が発生しており、深刻な問題となっている。
いじめによる自殺問題が相次いで発生した1970年代後半を「いじめ元年」とする考え方が一般的であるが、79年の相次ぐ自殺事件で一気にいじめ問題が表面化した。
平成18年10月19日、初等中等教育局長通知は、「いじめの問題への取組の徹底について」において、「いじめの問題への取組についてのチェックポイント」を示し、各学校および教育委員会に対して、取り組みの総点検の実施を促すとともに、次の事項に留意の上、取り組みの徹底を求めている。
①いじめの早期発見・早期対応について
・いじめは、「どの子どもにも、どの学校でも起こり得る」ことを十分認識し、早期発見に努める。
・スクールカウンセラー等を活用し、学校における相談機能を充実させる。
・特定の教員が抱え込むことなく、学校全体で組織的に対応する。
・いじめを把握したら、保護者および教育委員会に報告し、適切な連携を図る。
②いじめを許さない学校づくりについて
・「いじめは人間として絶対に許されない」との意識を児童生徒一人一人に徹底する。
・いじめる児童生徒に対しては、毅然(きぜん)とした指導が必要。
・いじめられている児童生徒にたいしては、学校が徹底して守り通すという姿勢を日頃から示す。
・いじめが解決したとみられる場合でも、継続して十分な注意を払い必要な指導を行う。
③教育委員会による支援について
・日頃から学校の実情把握に努め、いじめの訴えがあった場合には、学校への支援や保護者への対応に万全を期すようにする。
平成24年8月1日、文部科学大臣決定により、「子ども安全対策支援室」を大臣官房に設置した。
「子ども安全対策支援室」は、いじめの問題が背景にある児童・生徒の自殺、部活動等教育指導中の事故、凶悪事件、自然災害など、学校において子供の生命・安全が損なわれる重大事件・事故またはそのような事件・事故に至る危険性が高い重大な事態が発生した場合、学校や教育委員会が、その原因・背景等について把握し、迅速に効果的な対応が行えるよう支援するため、設置されたものである。
「24時間いじめ相談ダイヤル」の相談件数が増加しているなど、児童生徒や保護者の間に不安が広がっているのではないかと懸念されたことから、いじめに関する緊急調査を全国に発出した。
「いじめ」は犯罪行為に当たる可能性があるとの認識の下、学校と警察の連携強化を図り、学校・家庭・地域が一丸となって子供の命を守ることに徹底することが肝要である。
最近、重大な結果につながりかねないいじめ事案が社会問題化しており、実際に、いじめを受けていた児童・生徒が自ら命を絶って亡くなるという極めて痛ましい事案が発生している。このような情勢を受け、警察においても、学校等の関係機関との緊密な連携に留意しながら、いじめ問題に的確に対応していくことが求められている。
2011年に起きた大津市の中学2年男子の自殺問題では、教員はいじめを知っていたのに、学校全体では事態を放置していた。
この問題をきっかけに悲劇が繰り返されないようにと、いじめ防止対策推進法が施行されてから4年近く経つが、施行後も自殺が相次ぎ対策の形骸化が懸念される。
(あきやま・しょうはち)