新経済対策、アベノミクス加速を実現せよ
安倍晋三首相は来月2日に決定する経済対策について「財政措置の規模で13兆円、事業規模で28兆円を上回る総合的かつ大胆な経済対策をまとめたい」と述べ、参院選で「アベノミクスのエンジンを最大限に吹かしていく」と訴えた公約の実現に着手した。
これに呼応するように日銀は追加金融緩和を決定しており、これから内閣改造を行う安倍政権の経済対策と相乗効果をもたらすことを期待したい。
事業規模は28兆円超
首相は27日に福岡市で行った講演で、財務省などが20兆円規模を想定して調整を進めていた経済対策に、さらに8兆円上乗せする方針を示した。まさに大胆であり、市場の予想を上回ったことから、同日の日経平均株価が上昇するなど好反応を得ている。
その目的について首相は「しっかりと内需を下支えし、景気の回復軌道をいっそう確かなものとする」と述べた。国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費は安倍政権発足後に始動したアベノミクスの効果や消費増税前の駆け込み需要で2013年には右肩上がりの伸びを示した。だが、14年4月の消費税率8%への引き上げから落ち込み、その後2年を経過しても回復していない。
昨年から今年にかけては中国がバブル崩壊のリスクにさらされ、上海市場の株価下落に連動して日経株価の下落に見舞われた。中国のほか世界経済の牽引役と期待された新興4カ国(BRICs)はブラジル、ロシアとも厳しく、有望なのはインドだけという状況だ。
また、6月の英国の国民投票による欧州連合(EU)離脱決定は急激な円高をもたらした。このまま円高が進めば、輸出企業の業績が悪化することが懸念される。
さらに、構造改革・規制緩和による成長戦略として経済界が期待する環太平洋連携協定(TPP)も、合意を進めた肝心の米国が大統領選挙を境に批准が厳しくなっている。このため首相は消費税率10%への引き上げを19年10月まで延期した。それまでに増税に耐えられる経済力を回復しなければならない。
内需の下支えのために、低所得者へ1人当たり1万5000円の現金給付をする。厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会小委員会が、過去最高となる最低賃金(時給)の24円引き上げを決めたことなどと合わせて個人消費への刺激にはなろう。
経済対策はインフラ整備、防災対策などの公共事業が中心で、目玉はリニア中央新幹線の全線開業前倒しや整備新幹線の建設などだ。人口減少問題とあわせて東京一極集中の是正、地方の活性化も必要で、中央省庁や産業拠点の地方移転、農林水産業の振興、新産業の創出など魅力ある地方創生に向けた政策総動員を望みたい。
安倍政権で経済好循環を
ただ、財政難の中で国と地方の歳出額は7兆5000億円であり、財政投融資は6兆円だ。参院選で大勝した安倍政権の残りの期間を実りあるものにするため、経済好循環を実現させるべきだ。