小池新都知事、「ノーサイド」で国と連携を


 東京五輪・パラリンピックを4年後に控えた「首都の顔」に小池百合子氏が選ばれた。政治資金の私的流用問題で舛添要一前知事が辞職したのに伴う都知事選で、与党が支援する増田寛也氏や野党4党が推す鳥越俊太郎氏らを破って当選した。

 初の女性都知事の誕生だ。任期は4年、まさに五輪に向けての船出となる。小池氏と与党・自民党は、選挙戦が終われば同じ都民だという「ノーサイド」の精神で都民本位の都政を行ってもらいたい。

 政策抜きの野党共闘

 五輪だけでなく、首都直下に備える震災対策、待機児童や超高齢・少子化を見据えた福祉策の再構築など、東京都が抱える課題は多岐にわたる。新たな都政を前に進めるにも国との連携が欠かせない。

小池百合子氏

当選確実の一報を受け万歳をする小池百合子氏(中央)と支援者ら=31日午後、東京都豊島区の選挙事務所

 小池氏は自民党所属の衆院議員だった。当初、自民党都連に推薦を依頼したが、それを拒まれ、都連を批判し都議会の冒頭解散を唱えた。議会の解散は小池氏自身が述べるように不信任された場合だが、都民の審判を受けたばかりの新知事を都議会が不信任するわけがない。都議会に理解を求め、連携へ努力すべきだ。議会側も都民の審判を真摯(しんし)に受け入れ、小池新知事と新都政へ踏み出す必要がある。

 野党4党には猛省を迫りたい。参院選で改憲派が3分の2以上の議席を獲得したことで、野党共闘の枠組みにこだわり、知名度だけで鳥越氏を担ぎ出した。「スローガンはあっても政策がない」と批判され、週刊誌でスキャンダルが報じられると、無党派層も逃げ出し、支持が急速にしぼんだ。

 終盤には反核など都政から離れた政策を持ち出すイデオロギー色を鮮明にさせ、支持離れに拍車を掛けて当落に絡めず3位に沈んだ。これは政策抜きの野党共闘の反映と言うほかない。

 岡田克也・民進党代表は9月の代表選に出馬しない意向を表明したが、その中で「野党共闘で一定の成果を出せた」と評価している。だが、野党共闘が参院選に続いて2連敗した現実を直視すべきだ。

 今回の都知事選では各候補とも付け焼き刃的な政策が目立った。舛添前知事の辞任による予定外の選挙だったこともあるが、支持を得るためのパフォーマンスも少なからずあった。小池氏は知事就任の前に政策を整理し、「小池都政」を明確に示す責任がある。

 都は2020年の五輪開催を見据え、14年に「世界一の都市・東京」の実現を目指す「東京都長期ビジョン」を策定している。経済情勢などを踏まえ、これを見直すのか、実行の順位付けを変えるのか、精査する必要がある。

 五輪開催への課題も山積している。コンパクト五輪の原点に立ち返り、それに向けてのロードマップを改めて都民に示してもらいたい。テロ対策を含め、国と強固な協力体制を築くのは小池新知事の使命だ。

 「東京の魅力」発信を

 ロンドン五輪(12年)では再開発と連動した「ロンドンプラン」が注目された。

 五輪を通じて「東京の魅力」を世界に力強く発信するスタートにすべきだ。