「忠誠の誓い」を拒否、国家に反抗「かっこいい」
米バージニア州のセンタービル高校で教師の怒号が響いたのは、昨年11月のことだった。
「ここはNFL(ナショナル・フットボールリーグ)ではない!」
米国の学校で毎朝行われる、国家への忠誠を唱える「忠誠の誓い」の時間に起立しない生徒に腹を立てた教師が、生徒を校舎の外に引っ張り出す事件が起きた。NFL選手が始めた国歌斉唱時の「片膝抗議」の影響で、忠誠の誓いを拒否する生徒が全米各地で相次いでいたため、教師はこう怒鳴りつけたのだ。同校のあるフェアファクス郡では、忠誠の誓いを生徒に強制することを禁じており、教師の行動は行き過ぎと判断された。
黒人のこの生徒が起立拒否を始めたのは、警官による黒人射殺への抗議運動「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」に触発されたからで、NFLとは関係ないという。それでも、子供たちの憧れであるNFL選手が、片膝をついて国家に反抗を示すことが「かっこいい」とのイメージを作り上げたことと決して無関係ではないだろう。
昨年9月、トランプ大統領の発言に反発し、多くのNFL選手が一斉に片膝抗議をした試合の翌日、フロリダ州の小学校では、なんと1年生で片膝をついて忠誠の誓いを拒否する生徒が現れた。驚いた担任は生徒に国家に敬意を示す大切さを諭したところ、母親は息子の表現の自由が侵害されたと“逆ギレ”し、学校側に謝罪を求めた。
今年4月には、シアトルでの大リーグの試合前、地元小学校の合唱団が登場した国歌斉唱のセレモニーで驚くべき光景が見られた。子供たちが教師の指揮に合わせて歌声を披露する中、2人の生徒が片膝抗議をしていたのだ。国歌斉唱に招いた小学生がまさかそんな行動を取るとは誰が想像しただろうか。
NFL選手たちによる片膝抗議は、多くのファンを激怒させ、視聴率の大幅な下落を招いたことから、リーグは5月、フィールド上では国歌斉唱時の起立を義務付ける方針を発表。これにより、NFLの試合での片膝抗議はなくなるとみられるが、教育現場をはじめ多方面に飛び火した反抗の風潮が、収束に向かうかどうかは不透明だ。
一方、NFLのオーナーたちは、選手たちの不満を和らげるため、社会的不平等の是正に取り組む事業に約9000万㌦(約100億円)の資金を提供することで選手組織と合意した。だが、その資金の多くが左翼団体に流れると報じられている。
例えば、全国規模の事業に投じられる7300万㌦のうち、25%はオバマ前大統領の環境政策の特別顧問だったバン・ジョーンズ氏が設立した「ドリーム・コープス」という組織に割り当てられる。ジョーンズ氏は、共産主義者として革命家を目指し、毛沢東主義組織の創設メンバーとして活動した過去を持つ左翼運動家だ。
また、資金の50%を運用する「プレーヤーズ・コアリッション」という選手組織は、既に「全米市民自由連合」(ACLU)などさまざまな左翼組織と連携しており、資金は左翼運動を推進する団体に流れる可能性が高い。
このため、チケット代やグッズ購入代が左翼団体の活動資金になることを嫌う保守派のファンを「さらに遠ざける」(保守系企業監視団体「セカンド・ボート」)との見方も出ている。
(編集委員・早川俊行)






