トランプ氏が追い上げ、テレビ討論会が焦点に


2016米大統領選

 米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏が一部世論調査で民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官を逆転している。選挙戦の勝敗を左右する「スイング・ステート(揺れる州)」でもトランプ氏が追い上げていることから、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は「クリントン氏に警戒すべきサインが出ている」と指摘する。

トランプ氏

16日、米フロリダ州で開いた集会で演説するドナルド・トランプ氏(UPI)

 FOXニュースが15日に発表した世論調査では、両者の一騎打ちを想定した全米支持率でトランプ氏が46%となり、クリントン氏の45%をわずかに上回った。CNNテレビが6日に発表した調査でもトランプ氏の支持率は49%で、クリントン氏の48%を1ポイントリードしている。

 各種世論調査の平均値で8ポイント近い差があった8月上旬には「トランプ氏が残り3カ月で逆転するのは非常に厳しい」(米メディア)との見方が多かったが、1カ月半で盛り返した形だ。

 また、CNNテレビが14日発表した世論調査によると、「スイング・ステート」のオハイオ州ではトランプ氏が46%の支持率でクリントン氏の41%を5ポイント上回った。トランプ氏はフロリダ州でも逆転している。

 こうしたトランプ氏の挽回は「敵失」が続いたことが大きい。クリントン氏の一族らが運営する慈善団体「クリントン財団」の献金者への便宜供与疑惑が浮上し、長官時代に私用電子メールを公務で使っていた問題も再燃。さらにクリントン氏が「トランプ支持者の半分は嘆かわしい人々」と発言したことが物議を醸し、謝罪に追い込まれた。

 また、肺炎と診断されながらすぐに公表しなかったことも「秘密主義」との批判を浴びることになった。もともとクリントン氏を「信頼できない」とする有権者は多く、こうした「不誠実な対応が繰り返された」(米メディア)ことでいっそう不信感を生み、トランプ氏再浮上につながったとみられる。

 ただ、トランプ氏が勝利するために越えなければならない壁は依然として高い。WSJ紙によると、トランプ氏はオハイオ、フロリダ、ペンシルベニア、ノースカロライナの主要激戦州ですべて勝たないと選挙人538人の過半数(270人)獲得は難しい状況だ。一方のクリントン氏は、これらの州の一つでも制すことができれば勝利に近づくことになる。

 今後の焦点は1週間後の26日から計3回行われるテレビ討論会で、両候補ともそこで流れをつかみたい考えだ。

(ワシントン岩城喜之)