敬老の日、実りある老後の後押しを


 きょうの「敬老の日」を前に総務省が発表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は3461万人で、総人口に占める割合は27・3%、過去最多を更新した。女性に限れば30・1%が高齢者で、初めて3割を超えた。

 総人口の3割が高齢者となる日が、すぐそこまで来ている。これを見据えた国の制度や社会のシステムの再構築が急務である。国民一人一人も高齢化を見通した人生設計、「老い」への心の備えが必要だ。

65歳以上が過去最多

 一方、100歳以上の高齢者は、昨年より4124人増え、6万5692人に上る。健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態を指す「健康寿命」も伸びている。

 高齢化社会というと活力のない社会をイメージしがちだが、平均寿命や健康寿命が伸びたということは、より長い人生の時間が与えられたということだ。それを素直に喜び、実りある人生、明るく豊かな国家・社会づくりに生かすことを考えたい。

 もっとも、克服しなければならない問題は多い。例えば認知症。厚生労働省の調査によると、65歳以上で認知症とされる人は2012年時点で約462万人に達し、予備軍(軽度認知症)は400万人と推計される。65歳以上の4人に1人に当たる。

 認知症への社会的関心はとみに高まっており、内閣府が委託した調査でも「高齢者の健康について国や地方自治体に力を入れてほしいこと」のトップに挙がっている。認知症の研究がさらに進展し、その成果が予防に生かされることを期待したい。

 災害弱者としての高齢者の安全確保も大きな課題である。東日本大震災をはじめとした大地震で、高齢者の避難は最も難しい課題であることが明らかとなっている。また地球温暖化を背景に、台風や豪雨による自然災害の規模が、これまでの基準を超える傾向にある。

 先月末に台風10号に伴う大雨による浸水被害で、岩手県岩泉町の高齢者グループホームで9人の高齢者が犠牲となったのは記憶に新しい。自然災害対策の中で高齢者の避難態勢確立を重要課題として取り組むべきだ。

 65歳以上を高齢者と呼ぶとしても、実際、自分が老人の仲間入りをしたと実感する人は少ないのではないか。平均寿命や健康寿命の伸びを背景に70歳が適当との意見にも一理ある。

 実際、少子化で懸念される労働力不足などは、高齢者の能力や経験、ノウハウを生かすことである程度は補えるのではないか。高齢者の生活安定に資するだけでなく、生き甲斐(がい)や健康維持という面でもプラスになる。

 一方、定年退職を機に第二の人生をスタートするのもいい。日本では家族や会社のために自分の願望を犠牲にする傾向が強い。それはそれで意味のあることだ。そういう人々は、老いと引き替えに、あるいは長年の苦労のご褒美として大きな自由を得たとも言える。

健康維持を心掛けたい

 夢の実現は、65歳を過ぎてからでも遅くない。その舞台は、日本国内に限らす海外ということもあるだろう。いずれにしても健康が第一。健康維持を常に心掛けたい。