ウズベキスタン、戦略的な結び付きの継続を


 中央アジアのウズベキスタンで約四半世紀にわたり政権の座にあったイスラム・カリモフ大統領が今月、78歳で死去した。ウズベクは中央アジア最大の人口(約3000万)を抱え、中露の狭間にあり、さらにアフガニスタンとも国境を接しており、地政学的に重要な国だ。

カリモフ大統領が死去

 故カリモフ大統領は1994年5月、2002年7月、11年2月と計3回来日しており、親日家として知られた。安倍晋三首相は昨年10月、モンゴルと中央アジア諸国歴訪の際にウズベクにも立ち寄り、カリモフ氏と親しく会談している。

 経済協力開発機構(OECD)の下部機関、開発援助委員会(DAC)のウズベクへの政府開発援助(ODA)実績(14年)で、日本は米国やドイツを抜いてトップを記録した。カリモフ氏亡き後も親日国ウズベクと日本は良好な関係と支援を続けることが期待される。

 ウズベクは主にイスラム教スンニ派の国だが、カリモフ政権は特に、国内のイスラム過激派と過激派組織「イスラム国」(IS)との繋(つな)がりに警戒を強めてきた。人口密集地のフェルガナ盆地を基盤に、ISに忠誠を誓い、中央アジア全域に勢力を拡大している「ウズベキスタン・イスラム運動」(IMU)は新政権にとっても不気味な存在だ。

 大統領の死去によって権力の空白が生じれば、これまで強権で抑え付けられていたイスラム過激派が息を吹き返し、中央アジアの治安が流動化する恐れもある。今のところは混乱はなく、後継大統領の選出は比較的スムーズに進んでいるようだ。

 ウズベクの上下両院は、シャフカト・ミルジヨエフ首相(59)を全会一致で大統領代行に指名。同国選挙管理委員会は、次期大統領選挙を12月4日に行うと発表した。ミルジヨエフ氏が立候補し、次期大統領に選ばれる公算が大きい。ミルジヨエフ氏はカリモフ路線を引き継ぐものとみられる。

 カリモフ氏の葬儀はミルジヨエフ氏を葬儀委員長として故郷サマルカンドで執り行われ、ロシアからはメドベージェフ首相が参列。さらに、中国・杭州での20カ国・地域(G20)首脳会議に出席していたロシアのプーチン大統領は帰路、サマルカンドに立ち寄り、カリモフ氏の墓に献花。ミルジヨエフ氏と会談した。

 プーチン氏は「ウズベクと中央アジアの安定に貢献した」とカリモフ氏の功績を讃(たた)えるとともに「ロシアを最も信頼できる友人として、全面的に頼りにしてほしい」と伝え、「ロシアは相互発展を目指し、ウズベク国民と指導部を支えるためにできるだけのことはすべてする」と強調した。

 中央アジアは中国のシルクロード経済圏「一帯一路」構想の要に当たり、ウズベクではインフラ整備や企業進出で中国が影響力を増している。ミルジヨエフ氏への政権移行を機に、ウズベクへの影響力を強化しようというロシアの狙いは明らかだ。

地政学的に重要な親日国

 わが国も、地政学的に重要なこの親日国との戦略的な結び付きを継続し、深めていく必要がある。