香港立法会選、中国は「高度な自治」を奪うな


 香港の議会に当たる立法会の選挙で、反中国で「香港独立」色の強い「本土派」をはじめとする民主派勢力が議席を伸ばした。中国政府によって香港の民主主義が脅かされていることへの危機感の表れだ。

民主派勢力が議席伸ばす

 香港立法会の選挙は4年に1度実施される。定数70の半分を5選挙区の住民による直接選挙で選び、残り半分を業界団体などからの職能枠で選ぶ。選挙前は親中派が約6割の43議席を占めていたが、今回の選挙で民主派勢力は改選前の27議席から30議席に勢力を伸ばした。

 民主派勢力は全議席の3分の1超を確保し、選挙制度改革など重要議案に対する「拒否権」を確保した。選挙戦では苦戦が伝えられていたが、予想を超える伸長と言える。

 注目されるのは「香港独立」の可能性も示唆する本土派が6議席を獲得したことだ。本土派は香港を中国の一部と捉えず、香港こそが「本土」だと主張。「香港人」意識を高める若者を中心に支持を広げた。一方、旧来の民主派各党の政策を「手ぬるい」と批判している。

 香港では高度な自治を認める「一国二制度」の下で、言論の自由や司法の独立が保障されている。だが最近、中国政府の圧力で一国二制度が形骸化しつつある。

 中国政府を批判する書籍を扱う「銅鑼湾書店」関係者が中国本土で相次いで拘束されたこともその表れだ。今回の選挙で親中派の退潮を目の当たりにした中国政府や香港政府が巻き返しに出ることも考えられる。しかし、一国二制度は国際公約でもあり、ないがしろにすることは許されない。選挙結果を重く受け止める必要がある。

 今回の選挙では、中国政府の意向を背景に香港政府が民主派勢力の締め付けを行い、独立派と認定した6人の立候補を禁じた。だが、この強硬措置は有権者の本土派への同情を集め、本土派が伸長する一因となった。若年層の反中感情の根深さを示すものだ。

 香港での民主化運動で今も記憶に残るのは、2014年の「雨傘運動」だ。同年8月、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、行政長官選の立候補認定段階で民主派を事実上排除する決定を採択。これを「ニセの普通選挙」と非難し、民主的な選挙制度を要求した大規模デモが展開されたが、香港政府は譲歩を拒否し、梁振英行政長官はデモを「外部勢力の介入」として警察力で排除した。

 だが、弾圧は香港市民の政治意識を高める逆効果となった。当時「傘兵」としてデモに参加した学生指導者の一人は今回の選挙で最年少議員として当選したほか、2人が新党の議員として初当選した。

 一方、長年にわたって民主化運動の中心となってきた有力議員が落選するなど、民主派勢力の世代交代が進んだ。今後、旧来の民主派と本土派が協力し、香港の高度な自治を守ることが求められる。

民意を尊重すべきだ

 中国の習近平政権は、民主派勢力の締め付けを図るのではなく、選挙で示された民意を尊重すべきだ。