民進党新代表、自覚と準備の不足を疑う
民進党は臨時党大会で同党初の代表選を行い、岡田克也代表の後任に蓮舫代表代行を選出した。蓮舫氏は1回目の投票で6割近いポイントを獲得し、前原誠司元外相、玉木雄一郎国対副委員長の両候補に圧勝。新党になっても民主党政権崩壊後の低迷を克服できずにいる同党を、再び政権を担える政党に再生させる重責を担うことになった。
代表選期間に支持率減少
蓮舫氏は新代表として「重責をしっかりと受け止めて、選んでいただける政党に立て直す先頭に立っていきたい」と表明したが、民進党を取り巻く環境はますます厳しさを増している。
今回の代表選は、党再生に向けて国民の関心をどれだけ集められるかが焦点の一つだった。ところがNHKが代表選のさなかに実施した世論調査によると、民進党の支持率は前回に比べ0・7ポイント減少し、逆に自民党は1・7ポイント上昇した。様々な要因が考えられるが、蓮舫氏の二重国籍問題への対応がその一因であることは間違いないだろう。
もちろん二重国籍のまま国会議員になっても法律上は何の問題もない。しかし、蓮舫氏が目指した野党第1党の代表は、政権交代すれば、外交を含む国政の最高責任者であり、自衛隊の最高指揮官でもある首相になる立場なので、予(あらかじ)め身辺整理をしておくのは当然だ。それをしていなかったのは、あまりにも軽率であり、自覚と準備が足らなかったとしか言いようがない。
加えて、二重国籍疑惑が提起された後、台湾国籍が残っていたと判明するまでに蓮舫氏の発言(説明)が二転三転し、嘘(うそ)を塗り重ねているような印象を与えた。とても「私の不確かな記憶による発言」だけでは済まされない後味の悪さが残った。民主党代表時代に「偽メール事件」で辞任に追い込まれた前原氏が投票直前の決意表明で、しっかりと裏付けを取ること、すべての情報を開示すること、国民の前に真摯(しんし)であること――など、当時の“失敗の教訓”を蓮舫氏に伝えたことの意味を深く考えるべきだ。
一方、代表選で焦点となった次期衆院選での共産党との共闘や、連立与党と改憲政党が衆参両院で3分の2以上を占めたことで焦眉の急となった憲法改正問題について、蓮舫氏を含む3候補はいずれも原則的な立場を示すだけで、新機軸を打ち出すことができなかった。さらに、中国の公船や漁船が連日のように尖閣諸島周辺の接続水域や領海に侵入し、北朝鮮が弾道ミサイルや原子爆弾の実験に拍車を掛けるなど緊迫した情勢が続いているにもかかわらず、外交安保論議は不毛のまま終わった。
政権交代可能な政治へ
政権交代可能な政治に対する国民の願望は根強い。そのためには民進党が、日米同盟を破綻寸前に追いやり、景気沈滞の打開策を示せず、東日本大震災や尖閣諸島周辺の事態という国家的な危機に効果的に対応できなかった民主党政権の負のイメージを払拭(ふっしょく)しなければならない。代表選で唱えた「安心の好循環社会」を実現するためにも、蓮舫氏はまず、憲法、外交安保、経済という国家の基本問題に正面から取り組み、責任ある行動を積み重ねていくべきだ。