オバマ氏とクリントン氏の政治思想
米紙ワシントン・タイムズ電子版論説エディター
モニカ・クローリー氏に聞く
 米紙ワシントン・タイムズの電子版論説エディターなどを務める保守派コラムニスト、モニカ・クローリー氏はこのほど、世界日報のインタビューに応じた。クローリー氏はオバマ大統領の外交政策について、左翼の世界観に基づき米国のパワーを意図的に縮小させてきたと指摘。また、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン前国務長官もオバマ氏と同様、著名な極左活動家、故ソウル・アリンスキー氏の思想に傾倒していたことを踏まえ、米建国以来の国家理念を根本的に変革することを目指しているとの見方を示した。一問一答は次の通り。
(聞き手=ワシントン・早川俊行)
左翼革命家の理論を吸収
米建国の理念の変革目指す
オバマ氏の下で米国の指導力・影響力は低下し、世界は不安定化した。オバマ外交の背後にはどのような思想があるのか。

モニカ・クローリー氏 米コロンビア大学で国際関係博士号を取得。ニクソン元大統領の外交政策アシスタントなどを経て、現在、ワシントン・タイムズ紙の電子版論説エディター兼コラムニスト、FOXニュースアナリストを務める。
オバマ氏は極めて激しく深い左翼の背景を持つ。左翼界では、米国のパワーについてこう教えている。米国は誕生以来、インディアンや奴隷貿易で連れてきた黒人に対し、重大な不義を犯した。その代価を永遠に支払わなければならない。米国が過去半世紀果たしてきたグローバルな役割も行使すべきではない。なぜなら、米国は道義的にその役割を果たすに値する国ではないからだ、と。
オバマ氏は自身の政策を通じ、左翼の世界観を信奉していることを米国民と国際社会に証明してきた。過去7年半、われわれが見てきたのは、米国の縮小、撤退、謝罪だ。
オバマ氏は就任1年目を過去の米国の外交・安全保障政策に対する謝罪に費やした。そして、中東で一つの戦争を遂行するのがせいぜい、複数の戦争は想定しない、そんなレベルにまで米軍を骨抜きにした。
米国の影響力低下により、同盟国はもはや米国を尊敬、信頼しなくなった。一方、敵対国はやりたい放題だ。彼らは米国の最高司令官が行動を取らないことを知っているからだ。
ロシアが増長し、中国も増長し、イランは核保有に向かって進んでいる。米国が弱くなれば、世界は混乱し、大規模な変動が起きるのが歴史の教訓だ。これこそわれわれが今、中東や欧州などで目撃しているものだ。
オバマ氏は「反米」なのか。
オバマ氏の心の中は分からない。だが、オバマ氏は米国のパワーを全面的に縮小し、世界のリーダーの地位から後退することに力を注いできた。
オバマ氏は就任して間もない頃、「英国人が英国の例外主義を信じ、ギリシャ人がギリシャの例外主義を信じるように、私は米国の例外主義を信じる」と語ったことがある。米国は例外的な国ではない、世界で特別な地位を持たない、国連加盟国の一員にすぎない、というのがオバマ氏の信念だ。米国は特別な国ではないから、世界をリードすべきではない、そう信じている。
共和党のドナルド・トランプ氏が台頭したのは、こうしたオバマ氏に対する米国民の反動でもある。国民は米国が世界で2番目、10番目であることを望んでいない。米国の指導的地位を望んでいる。
クリントン氏が大統領になった場合、外交政策は変わるか。
クリントン氏のアプローチはオバマ氏とはわずかに異なるかもしれないが、全体的な結果は同じだろう。クリントン氏自身、自分の政権はオバマ政権の延長と述べている通りだ。
オバマ氏とクリントン氏には、極左活動家、故ソウル・アリンスキー氏の思想に傾倒していた共通点がある。
アリンスキー氏はコミュニティー・オーガナイジングを開拓した過激な左翼革命家だ。オバマ氏は政治の世界に入る前、コミュニティー・オーガナイザーとしてアリンスキー氏の理論を学び、シカゴ大学でこれを教えたこともある。
オバマ氏はアリンスキー理論に従い、持たざる者(低中所得層)を持つ者(富裕層)に反抗させるために混乱や不信、不満をあおることを得意とした。アリンスキー氏の息子は、オバマ氏が2008年に民主党大統領候補に選ばれた時、「オバマ氏は父の教えをしっかり学んだ」と指摘した。
一方、アリンスキー氏から直接教えを学んだのがクリントン氏だ。学生時代、アリンスキー氏を講演に呼んだり、卒業論文のテーマにするなど、アリンスキー氏の理論や戦略を吸収した。オバマ氏のようにキャリアを通じてコミュニティー・オーガナイジングに取り組んだわけではないが、クリントン氏が多くのアリンスキー理論を受け入れたことは確かだ。
クリントン氏が当選すれば、アリンスキー氏の弟子が3期続けて大統領になる。
オバマ氏は大統領候補だった2008年、「米国を根本的にトランスフォーム(変革)する」と語ったが、これこそアリンスキー氏が目指したものだ。資本主義や自由市場など米国の建国の理念を混乱を通じて打倒し、欧州型の社会主義に置き換えようとした。
オバマ氏がその実現に全力を注いだことは確かだ。クリントン氏も思想的、気質的にその計画を支持していると思われる。










