【社説】一般教書演説 指導力が問われるバイデン氏


バイデン米大統領=2月24日、ワシントン(AFP時事)

 バイデン米大統領が、今後1年間の内政・外交全般の重要政策課題を議会に説明する初の一般教書演説を上下両院合同会議で行った。演説では、ウクライナを侵略したロシアのプーチン大統領を「独裁者だ」と非難した上で「米国はウクライナの人々と共にある」と連帯を表明した。他国の主権を蹂躙(じゅうりん)するロシアに米国などの民主主義諸国が対抗していく上で、バイデン氏の指導力が問われる。

 ロシアへの強い非難

 一般教書演説は、通常であれば国内問題に多くの時間を割くが、今回はロシアへの強い非難から始まった。ウクライナ侵略を「プーチンによるいわれのない不当な戦争だ」と呼び捨てで繰り返し批判した。

 プーチン氏は停戦の条件として、ウクライナの「非武装化」や「中立化」などを求めている。ウクライナに北大西洋条約機構(NATO)への加盟を断念させる狙いだろうが、これではまるで属国扱いではないか。ウクライナがロシアと同様に主権国家であることを、なぜ受け入れようとしないのか。

 ウクライナ当局は、ロシア軍の攻撃で「民間人2000人が死亡した」と発表した。米国をはじめとする国際社会は、無辜(むこ)のウクライナ国民を大量虐殺したプーチン氏の責任を徹底追及しなければならない。

 バイデン氏はプーチン氏について「世界を屈服させようとして、大きな計算違いを犯した」と述べ、強力な制裁発動に踏み切った米欧の決意を見誤っていたと指摘。米欧と日本などは一致してロシアの責任を追及して代償を払わせており、プーチン氏が「かつてないほど世界から孤立している」と語った。

 日米欧は経済制裁として、世界の銀行決済取引網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの一部銀行を排除する。ロシア中銀による外貨準備の利用を制限する制裁も発動した。ロシア経済は通貨ルーブルが急落し、モスクワ証券取引所の株式取引が中止に追い込まれるなど大きな打撃を受けている。さらに、バイデン氏は演説でロシアの航空機による米領空通過禁止を打ち出した。強力な制裁でウクライナからの即時撤退を迫る必要がある。

 バイデン氏がロシアの侵略を強く非難し、民主主義諸国の結束を訴えたのは当然だ。だが、侵略の背景にはバイデン氏の失態があると言わざるを得ない。

 米世論調査では約6割の回答者が、プーチン氏の侵略決断の理由として、昨年8月のアフガニスタンからの米軍撤退に伴う混乱で「バイデン氏の弱さが見透かされた」ことを挙げた。バイデン氏がウクライナへの米軍派遣を繰り返し否定したことも侵略を招いたとみていい。

 中国に足元見られるな

 バイデン氏は「専制主義との闘い」で民主主義は勢いを増しており、「世界は明らかに平和と安全を選びつつある」と訴えた。「民主主義対専制主義」という構図を改めて示し、米国が世界を主導する意思を表明したと言える。しかしバイデン氏の指導力に疑問符が付けば、台湾統一を狙う中国にも足元を見られるようになることを忘れてはならない。