【社説】民主主義サミット 専制主義に結束して対抗せよ
バイデン米大統領はオンライン形式で初の「民主主義サミット」を開催した。
111の国・地域の指導者らが参加し、岸田文雄首相も出席した。日本のほか、欧州主要国や台湾などが招待された一方、バイデン政権が専制主義と批判する中国やロシアは招かれなかった。
開催の背景に危機感
民主主義サミットでは「専制主義からの防衛」「汚職との闘い」「人権尊重の促進」が主要な議題となった。バイデン氏がサミットを開催した背景には、世界的に民主主義が退潮傾向にあることへの危機感や、汚職の蔓延(まんえん)が民主主義の基盤となる「法の支配」や「透明性」をむしばむとの問題意識がある。
確かに近年、従来は民主主義国とされていた国家で強権統治が進むケースが増えている。また、中国はサミットに先立って「米国の民主の状況」と題した文書を公表。党派対立や社会の分断によって「米国の民主的制度の機能が衰退している」と分析した。
だが、国内では人権弾圧、国外では覇権拡大の動きを強める中国の共産党一党独裁体制が、民主主義体制よりも優れているということはあり得ない。現在は中国に勢いがあるように見えても、将来的には国際的孤立を深めて行き詰まることは目に見えている。
米国や英国、オーストラリア、カナダなどは、中国政府による新疆ウイグル自治区でのジェノサイド(集団虐殺)や人権侵害を理由に、来年2月の北京冬季五輪に政府関係者を派遣しない「外交ボイコット」を表明。日本も閣僚の派遣を見送る方向で調整に入った。強権統治が自らの首を絞めることを中国は認識すべきだ。
バイデン氏はサミットの開会演説で「民主主義は継続的かつ憂慮すべき挑戦に直面している」と強調。中露を念頭に「(民主主義を脅かす)権威主義を押し戻す」と訴えた。米国の同盟国である日本をはじめ世界の民主主義国家は、結束して専制主義に対抗しなければならない。
サミットに対し、中露などは「世界の分裂をあおるものだ」と批判した。特に中国は、台湾が招待されたことに「断固とした反対」を表明。中国軍機延べ13機が台湾の防空識別圏に相次いで侵入したのも、反発の表れとみていい。台湾海峡は「民主主義と専制主義の闘い」の最前線だと言えよう。
バイデン氏はサミットで「民主主義再生構想」を発表。各国の独立系メディア支援や自由で公正な選挙プロセスの擁護などに対し、4億2440万㌦(約480億円)を支出する。
また、人権侵害を助長しかねないデジタル監視技術の輸出管理強化に向けて多国間の枠組み「輸出管理・人権イニシアチブ」を新設すると表明。中国を牽制(けんせい)する狙いだ。
自由や人権を守り抜け
バイデン氏はサミットの閉幕演説で「われわれは民主的価値が国際システムの中心にあると確認する」と強調。専制主義に対する民主主義の優位性を訴えた。自由や人権などの普遍的価値を保障する民主主義を守り抜かねばならない。