日米豪印首脳会議 バイデン氏は不信を招くな
日本、米国、オーストラリア、インド4カ国(通称クアッド)が、米ホワイトハウスで対面で初めての首脳会議を開いた。
インド太平洋地域の4首脳が一堂に会し、会合の毎年開催で合意したことは、経済・軍事的影響力を増す中国への牽制(けんせい)につながるものとして歓迎したい。
共通の価値観持つ4カ国
クアッド4カ国はインド洋と太平洋を囲むように位置し、自由と民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つ。共産党一党独裁体制で、国内では人権弾圧、対外的には強引な覇権拡大の動きが目立つ中国に対抗し、地域の安定と繁栄のために尽力する必要がある。
首脳会議には菅義偉首相、バイデン米大統領、モリソン豪首相、モディ印首相が出席。バイデン氏は、クアッドの主導で新型コロナウイルスワクチン10億回分を途上国などに供与する計画が「順調に進んでいる」と述べた。また、宇宙・サイバー空間の安全確保や、質の高いインフラ整備支援で新たに協力枠組みを創設した。
採択した共同声明は、4カ国がインド太平洋地域での「法治、航行・飛行の自由、紛争の平和的解決、民主的価値、領土保全を支持する」と指摘。さらに、中国を念頭に「東・南シナ海を含む海洋秩序への挑戦に対抗する」と明記した。
菅首相は会合で、香港、中国・新疆ウイグル自治区の人権状況を取り上げて「深刻な懸念」を表明。「台湾海峡の平和と安定」を重視する日本の立場を説明した。4カ国が一致して中国の身勝手な動きを容認しない姿勢を示した意義は大きい。
バイデン氏は国連総会での演説で、同盟国や友好国と連携し外交を重視する政権の基本姿勢を強調した。しかし、アフガニスタン駐留米軍撤収をめぐる混乱で米国への信頼は揺らいでいる。アフガンではイスラム主義組織タリバンの復権を許し、再びテロの温床となる懸念が高まっている。同盟国などの不信を払拭(ふっしょく)できるかが問われている。
こうした中、バイデン氏は英豪両国と共に新たな安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」を立ち上げた。米英両国が豪州に原潜関連技術を供与し、原潜建造を支援することになったが、豪州がフランスとの潜水艦開発計画を破棄したため、猛反発したフランスが駐米、駐豪大使を召還する事態となった。
背景には、インド洋や南太平洋に海外領土を持つフランスが、中国の海洋進出に対処するための足掛かりとして豪州を位置付けていたことがある。米英豪の枠組みは確かに重要だが、そのことで他の同盟国との関係が悪化するようでは、中国に足元を見られかねない。米仏両国は関係修復を急ぐべきだ。
地域の安定に貢献を
4カ国の首脳会議は今後、毎年開催される。菅首相は間もなく辞任するが、次期首相にとっても4カ国の連携強化で中国の覇権主義的な動きに対抗していくことが大きな課題となる。
事実上の次期首相選びとなる自民党総裁選では、外交・安全保障政策も焦点となる。候補者には、日本だけでなく、地域の安定に大きく貢献できる政策の提示が求められる。