プーチン氏4期目、懸念される欧米との対立激化
3月のロシア大統領選で圧勝したプーチン大統領が、通算4期目をスタートさせた。
だが、就任式前にはプーチン氏の就任に反対するデモがロシア各地で行われるなど、長期政権への不満も高まっている。欧米との対立も先鋭化している。
ロシア各地で反政権デモ
任期は6年で、2000年5月のプーチン政権誕生以来、首相時代の4年間を含めて、71歳になる24年までの実質24年の長期政権となる。ソ連のスターリン共産党書記長時代の31年には及ばないものの、ブレジネフ政権の18年を超える。
宣誓後の演説では「われわれは今、全ての能力をまず国内の最も喫緊の課題への対処や、経済と技術の躍進のために使わなければならない」と強調。国民の生活向上を目指す内政、とりわけ国民の所得増大への取り組みを4期目の優先課題とする旨表明した。就任式後にはメドベージェフ氏を再び首相に指名。プーチン・メドベージェフ両氏のタンデム(連携)政治はしばらく続きそうだ。
プーチン氏は国民の愛国心に訴えながら、エリツィン政権時代の大きな混乱から脱して社会を安定させてきた。この安定こそ大多数の国民の支持を得られてきた理由だ。だが、そこには新興財閥の解体やメディアの統制など強権的手法が伴った。
大統領選では得票率76・69%と大統領選史上最高の得票率で圧勝した。しかし、欧州安保協力機構(OSCE)の選挙監視団は、大統領選で集会の自由や候補者登録などが制限されたと指摘。野党勢力指導者のナワリヌイ氏は、昨年2月に横領罪で有罪判決を受けたことを理由に出馬を認められなかった。これでは選挙の正当性に疑問符が付きかねない。
就任式の直前にはナワリヌイ氏の呼び掛けでロシア各地で反政権デモが行われ、モスクワでは数千人が参加。若者を中心にプーチン政権への不満が蓄積されていることが浮き彫りになった。こうした不満の声に耳を傾ける必要があるのではないか。
ロシア経済は14年のウクライナ危機などを受けて欧米が相次いで発動した経済制裁で停滞している。国際秩序を揺るがす行為が制裁の対象となるのは当然だ。国際社会と協調して地域の安定に努めない限り、ロシアの繁栄はあり得まい。
昨年のトランプ米政権誕生以来、新冷戦と言われるほど米露関係は悪化している。ロシアによる16年米大統領選介入疑惑、いわゆる「ロシアゲート」や、シリア問題を中心とした中東情勢などが依然として両国の対立の原因となっている。3月に英国で起きた元ロシア情報員暗殺未遂事件は欧米とロシアの外交官追放合戦に発展するなど摩擦は激しさを増しており、懸念を抱かざるを得ない。
領土返還交渉の前進を
一方、ロシアは不法占拠している北方領土を極東の軍事拠点として重視し、最新鋭ミサイルの配備などを進めている。
安倍晋三首相は今月下旬にロシアのサンクトペテルブルクでプーチン氏と日露首脳会談を行う。日本固有の領土である北方領土の返還交渉を前進させなければならない。