過激な性教育、セクハラまがいの授業やめよ
東京都足立区の区立中学校が3月、「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」などを取り上げた公開授業を行った問題で、東京都教育委員会は学習指導要領で示されていないことを集団指導したり、保護者の理解なしに行ったりしないなどとする対応方針を示した。当然の方針だ。
学習指導要領から逸脱
学習指導要領から逸脱した過激な性教育は、一部教師や特定団体が「人権」の名の下に学校現場に持ち込み、混乱を生じさせている。それだけに都教委は対応方針を都内の中学校に周知徹底させるべきだ。
問題の授業は「人権教育、性に関する学習」をうたい、生まれてくる生命の尊厳にほとんど触れず、妊娠を性交する上での「リスク」と捉え、避妊についてコンドームやピルの使用方法などを紹介。また教師が生徒に「高校生は性交渉してもいいと思うか」と質問し、同級生らの前で答えさせたりしたものだ。
中学生という発達段階の異なる生徒がいる中で、あまりにも配慮を欠いた授業だと言わざるを得ない。性交渉の是非を問うのはセクハラにも等しい。学習指導要領は小中高いずれの段階でも性交渉を扱っていない。避妊や人工妊娠中絶は本来、高校で取り上げるものだ。都教委が問題視したのは当然のことだ。
なぜ「性交教育」が中学に浸透してきたのか。背景には、足立区の授業に「人権」が冠されているようにイデオロギー的な人権主義がある。日教組が中高生向けの人権テキストとして推奨した『生徒人権手帳』は、子供の権利として「セックスするかしないかを自分で決める権利」を挙げているが、こうした人権観も影響している。
今回、「“人間と性”教育研究協議会」という団体が積極的役割を果たしたとされる。同団体の代表理事を務めた故山本直英氏は「いつ、どこで、誰とセックスするかは子供の決める問題」とし、性と結婚を切り離す「自由恋愛」(フリーセックス)を奨励。2005年には小学生低学年に性器や性交、避妊具などを図解入りの副教材で説明し、人形を使って性交の“実演”を行う性教育が社会問題化した。
都教委の方針について「国際的に遅れている」との声があるが、的外れな批判だ。性教育はその国の宗教・文化を反映し、伝統的な価値観を重んじる国も少なくない。米国は1990年代に家庭や道徳教育を重んじる「自己抑制教育プログラム」を導入している。
英国は初等教育では、性を道徳的な文脈で教えることを重視し、中等教育で家族や人間関係の指導に加えて避妊などを教育する。足立区のような道徳抜きの性教育とは異質だ。
人の尊厳を軽んじるな
ピルの使用を中学生に奨励するのは重大な人権侵害だ。世界保健機関(WHO)はホルモンのバランスが安定していない思春期の子供にピルを飲ませることを戒めている。足立区は10代の妊娠・出産率が高い地域だから避妊方法などを教えたとしているが、そうであれば米国の「自己抑制教育プログラム」を参考にすべきだ。
人の尊厳や道徳を軽んじる性教育は断じて容認できない。