米の対露制裁、プーチン氏は欧米と協調を


 領に近い新興財閥(オリガルヒ)の関係者7人、高級官僚ら17人、およびオリガルヒの所有する12企業を対象に制裁を発動した。この新たな制裁は昨年8月に成立した対ロシア制裁強化法などに基づく措置。米国内の資産が凍結され、米国人との取引も禁じられる。

新興財閥や高官が対象

 対ドル、対ユーロのルーブル相場は制裁発動後に約1年4カ月ぶりの安値を付け、関係企業の株は大幅に下落。ムニューシン米財務長官は「新興財閥やエリートはロシアの腐敗したシステムから利益を得ている」と指摘した。

 制裁では、プーチン氏に近い人物がそろって制裁の対象に挙げられた。オリガルヒでは、アルミ事業で財を成した大富豪オレグ・デリパスカ氏、石油化学企業シブールの株主で、プーチン氏の娘と結婚して急激に資産を膨らませたキリル・シャマロフ氏、国営天然ガス独占企業ガスプロム社長アレクセイ・ミレル氏などがいる。

 政府関係者では、内相、安全保障会議書記、大統領補佐官、南部連邦管区大統領全権代表、国家親衛隊隊長ら要職者の名前が挙がっている。米国にはオリガルヒなどを標的にすることでプーチン政権への圧力を強化する狙いがある。

 ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合やシリアのアサド政権支援などで、米露関係は冷戦終結後「最悪」とされる。米政府高官は今回の追加制裁について、選挙介入だけでなく、こうした「ロシア政府による有害な活動全体」への対抗措置だと説明。英国で起きた元ロシア情報機関員の暗殺未遂事件では、米欧とロシアは外交官の追放合戦を繰り広げた。

 シリアの化学兵器使用をめぐっては、国連安全保障理事会で米国の独立調査団の設置決議案にロシアが拒否権を行使。米英仏によるシリアへの軍事攻撃にロシアは強く反発した。

 化学兵器を使うことは国際法違反だ。シリアでは子供を含む数十人が死亡した。ロシアがアサド政権を支援することは使用を容認するに等しく、到底許されるものではない。

 ロシアにとってシリアはソ連時代からの同盟国だ。シリア西部には、中東のロシア海軍拠点であるタルトゥスの海軍基地もある。シリアへの影響力を保持しようとする姿勢が欧米諸国との摩擦を生んでいると言える。米露の対立で、死者30万人を超えたシリア内戦の終結の兆しは見えない。

シリア問題解決に努めよ

 国際通貨基金(IMF)によれば、ロシアの経済成長率は、16年がマイナス0・2%、17年プラス1・5%で、プーチン政権は今年、プラス1・7%を目標にしている。しかし米国の制裁で、大きな経済的ショックを受けた形となった。

 これはロシアの自業自得だと言わざるを得ない。欧米との対立が強まれば国民が苦しむだけだ。プーチン氏は欧米と協調することで、シリア問題の解決などに努めなければならない。