プーチン大統領、今のままでは課題解決できぬ


 ロシアのプーチン大統領は来年3月の大統領選挙に立候補することを表明した。約8割の支持率を誇っており、有力なライバルは不在という無風状態で、当選は確実とみられている。

 大統領の任期は6年で、通算4期目の当選を果たせば、2000年の初当選から首相在任中も含めて24年間も政治の実権を握ることになる。任期を全うすれば、ソ連時代のブレジネフ政権の18年間を超え、29年間トップの地位にいたスターリン以来の長期政権だ。しかし、次期大統領の課題は山積している。

来年選挙で当然確実

 大統領選には、3月と6月の反政権デモの呼び掛け人で、野党勢力指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏やプーチン氏の恩師の娘でテレビ司会者のクセニア・サプチャクさんらが出馬を表明した。

 だがナワリヌイ氏について中央選管は、2月に横領罪で有罪判決を受けたことを理由に「出馬できない」と発表。ナワリヌイ氏は「判決は政治的なでっち上げ」と反発している。一方、サプチャクさんは反政権の立場だが、背後でクレムリンとつながっているとの見方もある。

 プーチン氏はエリツィン元大統領から後継に指名され、00年に大統領に就任。当初は原油価格の追い風で経済の高成長を成し遂げた。しかし近年、原油安やウクライナ南部クリミア半島併合を受けての米欧の対露制裁もあって経済は停滞し、格差拡大や汚職で国民の間の不満は募りつつある。

 プーチン氏は議会や地方勢力の掌握、新興財閥の解体、メディアの統制など強権的と言える手法で国内政治の安定を図ってきた。だが、政権長期化は社会に閉塞(へいそく)感を漂わせていることも否定できない。

 外交課題も数多い。ウクライナ侵攻は出口の見えない状況が続く。「ロシア人を守る」との口実で侵攻を始めたが、自身の首を絞める結果となっている。侵攻の成否は政権の求心力に大きく影響しよう。

 シリア内戦をめぐっては、国連安全保障理事会で拒否権行使を繰り返し、米国と激しく対立した。シリア問題で主導権を握り、シリアへの影響力を確保する狙いがあろうが、国際社会の視線は一層厳しくなろう。

 核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮に関しては、制裁は既に尽くされており、対話を再開する必要があるとしている。ロシアには、この問題を米国に対する外交カードにする思惑があろう。だが核開発のための時間稼ぎをさせないためにも、対話の大前提は北朝鮮の核放棄であることを忘れてはならない。

 大統領選をめぐり、ロシア上下院は5月に投票日を来年3月18日とする法案を可決。ロシアは14年3月18日にクリミア併合を宣言している。節目の日の選挙で国民の愛国心をあおり、プーチン氏の圧勝につなげようとする狙いだろう。しかし、現在の政策を続けても国内外の課題は解決できまい。

四島返還へ道筋付けよ

 いずれにせよ、プーチン政権が24年まで存続することはほぼ確実だ。日本はプーチン政権との間で北方四島返還への道筋を付ける必要がある。