五輪ロシア除外、不正根絶で競技の公正性守れ
国際オリンピック委員会(IOC)は、ロシアの組織的ドーピングを理由に来年2月の平昌冬季五輪への選手団派遣を認めないことを決めた。競技の公正性を損なう不正を厳しく処分するのは当然である。
深刻なドーピングの蔓延
IOC理事会では、2014年ソチ五輪でロシアが組織的なドーピングを行ったとする報告書が承認された。ロシアはソチ五輪で金13個を含む33個のメダルを獲得する躍進を見せたが、その後のIOCの再検査で違反が次々と判明。計11のメダルが剥奪され、ノルディックスキーやボブスレーの金メダリストを含む25人が永久追放処分を受けた。極めて深刻な事態だ。
世界反ドーピング機関(WADA)調査チームの報告書では、ソチ五輪でロシア選手の検体のすり替えが、下水道工事の技術者を装った連邦保安局職員によって行われたとされている。ロシアは国主導のドーピングを否定している。しかし、これだけ大規模な不正が発覚したのでは、国が強く関与したと疑われても仕方があるまい。
ドーピングの蔓延(まんえん)は、競技の公正性に対する疑念を呼び起こすことになる。今回のIOCの決定では、ロシアのムトコ副首相(元スポーツ相)が五輪から永久追放となったが、来年ロシアで開催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)の組織委員会会長を務めるのはムトコ氏だ。ロシアではサッカー選手のドーピング関与も疑われている。これでは清潔なイメージを保つことは難しいだろう。
ロシアのドーピング問題は根深い。かつて旧ソ連は西側諸国に社会主義国家の優位性を示すため、五輪でメダルを量産した。選手たちは勝てば生活が保証されたため、組織的なドーピングが横行していたとされる。メダル獲得のために手段を選ばない体質は、旧ソ連時代からのものだと言えよう。
今回の決定ではIOCの配慮も見られる。過去に違反歴がなく、潔白が証明された選手は「ロシアからの五輪選手」として五輪旗の下で参加を認められる。表彰式などでは国歌の使用を認めず、五輪賛歌で代用する。連帯責任を問うロシアの完全な排除は見送られた形だ。
昨夏のリオデジャネイロ五輪に際して、IOCはロシアによる組織的不正の認定を避け、出場資格を競技団体の判断に丸投げして批判を受けた。今回の処分は一歩前進だが、ロシアが今回の決定を全て順守した場合、閉会式で国旗を掲げられる可能性に言及したのは甘くないか。
ユニホームにロシアの国名が入ることも、事実上の選手団といった印象を与えかねない。IOCが曖昧な態度を取れば、ドーピングの根絶は不可能だ。20年東京五輪・パラリンピックへの影響も懸念される。
日本は防止体制整備を
東京五輪に向け、今年5月の国会提出を予定していた議員立法のドーピング防止法案は、与野党対立の影響で提出されず、法整備は遅れている。国は、ドーピング検査員を20年までに現在の約310人から約460人に増やす計画だ。国際社会とも協力し、防止に向けた体制を整備する必要がある。