ロシア経済低迷、国際社会との協調が必要だ


 今月半ば、ロシア通貨ルーブルの対ドル相場が半年ぶりの安値をつけた。先行きに暗雲が立ち込めるロシア経済の動向が注目される。

 背景には、原油安などによる輸出減少に加え、ウクライナ危機をめぐって欧米の発動した経済制裁がある。苦境を脱するには、ウクライナ東部の停戦合意履行など、国際社会との協調が必要だ。

 通貨が2月以来の安値

 8月18日のモスクワ外国為替市場で、ルーブルの対ドル相場が、1㌦=65・83ルーブルと、今年2月12日(1㌦=65ルーブル)以来の安値に下落した。対ユーロ相場も72・90ルーブルまで下げた。原油価格の下落が続いていることが、主な原因とみられている。アジアの経済減速と世界的な原油供給過剰の懸念で、ブレント原油相場は低迷している。

 ルーブル相場を圧迫している要因としては、ウクライナ東部での戦闘再開も挙げられる。ロシアの通信社によれば、ウリュカエフ経済発展相は、原油価格の軟調がさらに続く可能性が高いため、ルーブル相場は今後とも下落するとの見通しを明らかにした。

 最近のルーブル安はロシア政府にとって重大な関心事で、クレムリンは外為市場の沈静化に努めている。プーチン大統領は「政府はこの問題に最大限の注意を払い、重要視している。我々は毎日、この問題に取り組んでいる」と述べるとともに、「ロシア中央銀行は、少なくとも金融システムの安定性を保つためにルーブル高を目指して多大の努力をしている」と楽観的な口調で通貨安定を約束した。

 しかし、一般的にルーブル安に対する悲観的な見方は、経済の鈍化現象に伴い、強まりつつあるようだ。第2四半期の国内総生産(GDP)成長率はマイナス4・6%と、第1四半期のマイナス2・2%から一段と落ち込んだ。

 ロシア中銀は最近、ロシアの潜在成長率を1・5%とし、13年発表の2・0%~2・5%を下方修正した。これは、ロシア経済の見通しがここ数年間に悪化したことを裏付けるとロイター通信は報じた。

 昨年12月にルーブル相場が一時、1㌦=80ルーブル超に急落した際には、ロシア市民がルーブルをドルやユーロに交換しようと長い行列をつくる騒ぎとなった。今のところ、このようなパニックが起きるような兆候は見られないという。もっとも、消費者物価の上昇(7月は約15%アップ)など深刻なインフレに国民が悩まされているのは事実で、ウクライナ情勢をめぐる欧米の経済制裁が長期化していることも経済全体の足を引っ張っているとの見方が強い。

 地域の安定に貢献を

 メドベージェフ首相が日本固有の領土である北方領土の択捉島への訪問を強行したのは、こうした経済低迷から国民の目をそらすために、北方領土を含む極東開発の意義を強調する狙いもあろう。

 しかし「力による現状変更」で国際秩序を乱せば、ロシアの孤立が深まるだけだ。地域の平和と安定に貢献することが、経済的苦境を脱し、国際社会の信頼を得られる道ではないのか。

(8月28日付社説)