反政権指導者拘束、プーチン政権は即時釈放せよ


 ロシアの反政権指導者であり、昨年毒殺未遂に遭ったアレクセイ・ナワリヌイ氏が療養先のドイツから空路帰国したところを、待ち構えていた治安当局に拘束された。支持率低下に直面するプーチン政権が、9月の下院選を前に、同氏の活動を阻止しようという政治的な動機があるとみられる。ナワリヌイ氏を即時釈放すべきだ。

ドイツからロシアに帰国

 ナワリヌイ氏は2011年、下院選での不正疑惑を受けロシア各地で広がった大規模な反政権デモを主導し注目された。政権の不正と汚職を追及し、当時のメドベージェフ首相が所有する複数の豪邸などを暴露する動画を公開。プーチン政権の支持率低下に追い打ちをかけた。何度も投獄されながらも屈せず「反腐敗デモ」を繰り返し、政権を追及してきた。

 昨年9月の統一地方選を前に野党の選挙運動を支援する中、モスクワに戻る旅客機内で突然意識を失った。ロシアで特別な治療はされず、移送先のドイツで旧ソ連の軍用神経剤「ノビチョク」系毒物の投与が確認された。英調査報道機関ベリングキャットなどは昨年12月、ロシア連邦保安局(FSB)が毒殺未遂に関わったと報じた。プーチン政権は関与を否定している。

 帰国すれば拘束される可能性は高かった。ロシア当局は14年に横領罪で有罪となったナワリヌイ氏が「執行猶予中の違反」を繰り返したとして、拘束する方針を示していた。執行猶予を取り消し、禁固3年半の実刑に切り替える可能性もある。これに加えロシアの捜査委員会は、3億5600万ルーブル(約5億円)もの巨額詐欺の疑いでナワリヌイ氏らへの捜査を始めている。

 しかし、ナワリヌイ氏は帰国した。「刑事事件はすべてでっち上げだ。私は何も恐れていない」と語り、さらに動画投稿サイトで公開した映像で「恐れるな。街頭へ出よ。私のためでなく、自らと自らの未来のために」と語り、政権との対決を改めて表明した。

 ナワリヌイ氏らの抗議集会は治安当局に繰り返し排除されてきた。一方、ナワリヌイ氏らがインターネットなどを通じて政権与党・統一ロシア以外の候補への投票を呼び掛ける「賢い投票」運動は、19年のモスクワ市議会選で野党勢力を伸長させ、統一ロシア支配に風穴を開けた。

 プーチン大統領は昨年7月、自らの長期続投を可能とする憲法改正を行った。大統領経験者の免責特権を拡大し、生涯にわたって刑事訴追されないほか、大統領経験者が退任後に終身上院議員となる法改正も行った。

 独裁的な体制を強化してきたが、長期化する経済の低迷や、社会の閉塞(へいそく)感の拡大を受け、与党支持率は低下し続けており、政権には焦りも見える。9月に下院選を控える中、野党勢力封じ込めのため、ネット上での言論統制をさらに強化した。

国際社会の厳しい目

 プーチン政権は、帰国したナワリヌイ氏が、毒殺未遂を乗り越えた野党指導者として反政権運動を活発化することを恐れ、拘束したのではないか。国際社会がロシアに厳しい目を向けるのは当然だ。ナワリヌイ氏を即時釈放すべきだ。