改正憲法が発効 民主主義を目指した露の終焉


 プーチン大統領の長期続投を可能とするロシアの憲法改正案が、国民投票で8割近い賛成票を集めて承認され、発効した。

 マスコミ統制、選挙制度改変などさまざまな手法によって独裁的な体制を強化してきたプーチン氏は、自らの政治体制の延命のため憲法を改正するに至った。愚かな行為と言わざるを得ない。

プーチン氏の続投可能に

 2000年に大統領に就任したプーチン氏は、20年にわたり事実上、ロシアの最高指導者の座にある。現在、通算4期目のプーチン氏は、24年に行われる次期大統領選には立候補できなかったが、改正により立候補の資格が与えられた。さらに2期12年、83歳までの続投が可能となった。

 プーチン氏は次期大統領選への出馬を明言していない。しかし、出馬する気がないのであれば、大統領経験者の任期をカウントしないという条項を新憲法に入れる必要はないだろう。

 ソ連崩壊後の新生ロシアの指導部には、経験不足は否めないが、自由と民主主義を目指したリーダーらがいた。しかし、急激な市場経済化が混乱を生み、この混乱に乗じて富を握ったオリガルヒと呼ばれる人々が政治に介入した。市民の不満の受け皿となった共産党が台頭し、ロシアは政治的にも経済的にも大混乱に陥った。

 エリツィン大統領の後継者となったプーチン氏は「法の独裁」を掲げ、中央集権化を推進し秩序回復に動いた。ロシアの主要輸出品である原油価格の高騰による経済成長という追い風も受け、国民の多くがプーチン氏を支持した。

 しかし、その国民の期待は裏切られることとなった。主要メディアを統制し、自らに都合の悪い情報から国民の目を遠ざけた。選挙制度の改変によって、リベラル派野党は国政の舞台から消えた。現在の下院は、共産党を含む与野党4党全てがプーチン氏を支持する「翼賛体制」となっている。

 11年12月の下院選では、選挙に不正があったとして数万人規模の「反プーチン・デモ」が行われた。しかし「翼賛体制」はますます強化され、多くの市民は政治への参加意欲を失っていった。

 政府や国営企業などの主要ポストを大統領の取り巻きらが占めるだけでなく、彼らがそのポストを“世襲”させることによって、階層社会が固定化されつつある。

 そしてプーチン氏は、自らの独裁的体制を延命させるため憲法を改正したのだ。改正憲法には、最低賃金や年金支給額の保証など、国民受けする改正点を多く盛り込んだ。国民投票はこれを一括して承認するか否かという形式で行われた。

容認できぬ領土条文

 新憲法は「領土割譲の禁止」を明記する。また、第2次大戦の旧ソ連の勝利に関し「歴史的真実を守り、矮小(わいしょう)化を許さない」といった条文も含む。

 プーチン氏は、これらの条項が日本固有の領土で現在はロシアが不法占拠している北方領土に関わるものであることを示唆している。わが国としては到底容認できない。